平成29年版 消防白書

3.各消防本部において実施すべき対応策

(1)トップの意志の明確化等

ハラスメント等を撲滅するため、消防長が宣言等により意志を明確にし、消防職員に周知徹底する必要がある。
消防庁においては、消防長の意志の明確な表明について、先進事例の紹介等を行った(「消防本部におけるハラスメント等を撲滅するための、消防長の宣言等による意志の明確な表明について」(平成29年7月4日付け消防庁消防・救急課事務連絡))(特集7-1図)。

特集7-1図 消防長の宣言の事例(7月4日付け事務連絡より大阪市消防局の事例)

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特集7-1図 消防長の宣言の事例(7月4日付け事務連絡より大阪市消防局の事例)-1
特集7-1図 消防長の宣言の事例(7月4日付け事務連絡より大阪市消防局の事例)-2

また、当該意志を具体的な取組につなげるための方針を検討の上、策定するとともに、定期的に当該取組の進捗状況を管理し、これを踏まえ取組の改善を行うため、消防本部の幹部職員に加え、可能な限り有識者等を構成員とするハラスメント等の撲滅を推進する会議を開催する必要がある。
消防庁においては、当該会議の要綱のひな形を提示した(「消防本部におけるハラスメント等を撲滅するための対応策について」(平成29年7月25日付け消防庁消防・救急課事務連絡。以下「7月25日付け事務連絡」という。))。

(2)ハラスメント等通報制度の確立及びハラスメント相談窓口の設置

ハラスメント等は、上司、同僚などの周囲の者がいつもと様子が異なることに気付き声を掛けるなどのサポートをすること、ハラスメントを受けたと考える消防職員から上司、同僚などの周囲の者へ相談すること等により円滑に解決されることが望ましい。
しかし、こうしたことでは解決できない場合に備え、ハラスメント等通報窓口で「通報」を受け、必要に応じハラスメント等調査委員会で「調査」を十分に行い、その結果を市町村長等に「報告」するなどの一連のハラスメント等の事案対応を行い、解決を目指す「ハラスメント等通報制度」を確立する必要がある。また、通報にまでは至らなくても、自らが受けた行為がハラスメントに該当するのかどうか等の相談をすることにより、精神的なサポートを受けることができる「ハラスメント相談窓口」を設置する必要がある(特集7-2図)。

特集7-2図 ハラスメント等通報制度・ハラスメント相談窓口のイメージ(一例)

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特集7-2図 ハラスメント等通報制度・ハラスメント相談窓口のイメージ(一例)の画像。ハラスメント等通報制度は、市町村長部局に設置したハラスメント等通報窓口へ通報すると、ハラスメント等調査委員会による調査、市町村長への報告が行われた後、消防本部の消防長へ伝達し、行為者の処分等の事案対応を行い、再発防止の取り組みを行う。ハラスメント相談窓口は、消防本部・消防庁・都道府県のハラスメント等相談窓口に相談し、精神的なサポートを受けられる仕組み。

当該通報制度の確立及び当該相談窓口の設置の際に留意すべき事項のうち、主なものについては以下のとおり。

ア 情報の秘匿性の確保

情報の秘匿性を確保することにより、通報者のプライバシーを保護するとともに、通報者が不利益な取扱いを受けないように十分配慮すること。

イ アクセスの容易性の確保

ハラスメント等通報制度やハラスメント相談窓口の存在を周知徹底するとともに、その利用を啓発することにより、通報しやすい環境を作るように十分配慮すること。なお、特集7-2図で示すとおり、次長通知において、ハラスメント等通報窓口を消防本部ではなく市町村長部局に設置することを基本的な仕組みとしている理由の一つとしては、職員数が少ない消防本部では、消防本部に窓口を置いた場合、通報をした際容易に個人を特定されてしまうのではないかという懸念を与えかねず、アクセスの容易性の確保ができないおそれがあることが挙げられる。

ウ 透明性の確保

通報後のプロセスを公表しておくことにより、透明性を確保するよう十分配慮すること。

エ 既に同趣旨の体制を整備している場合の対応

既に同趣旨の体制を整備している場合においては、新しく体制を整備し直す必要はないが、改めて、上記アからウに掲げる留意事項を徹底するとともに、体制の周知徹底を図ること。
消防庁においては、当該通報制度及び当該通報窓口の要綱のひな形を提示した(7月25日付け事務連絡)。

(3)懲戒処分の厳格化

ハラスメント等に関して明確に記載した懲戒処分基準を策定し公表すること及び懲戒処分の公表基準を策定し公表することにより、懲戒処分を厳格化する必要があることから、消防庁においては、懲戒処分基準及び懲戒処分基準の公表基準のひな形を提示した(7月25日付け事務連絡)。

(4)職員のセルフチェック・アンケート等の実施

ハラスメント等を可能な限り未然に防止するため、自らの行動を振り返るチェックシートの導入、ハラスメント等の実態を調査するためのアンケートの定期的な実施などの職員の気付きを促す取組を行う必要がある。
消防庁においては、当該チェックシート及び当該アンケートのひな形を提示した(7月25日付け事務連絡)。

(5)研修等の充実

例演習又は職場ミーティングの場を活用し、ハラスメント等の撲滅の必要性、対応策及びコンプライアンスについて話し合うことで、職員の意識向上を図る必要がある。

(6)消防職員委員会の有効活用

消防職員委員会においてハラスメント等への対応策について審議されることは、対応策の実現のために有効であることを踏まえ、消防職員委員会においてハラスメント等への対応策について意見が提出された場合には、積極的に審議する必要がある。

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