平成30年版 消防白書

2.広域応援・空中消火による消防活動

(1)空中消火の実施状況

林野火災は、対応が遅れると貴重な森林資源を大量に焼失するばかりでなく、家屋等に被害が及ぶことや市町村境、都府県境を越えて拡大することもある。そのため、ヘリコプターによる情報収集と空中消火は、広域応援や地上の消火活動との連携による迅速かつ効果的な消火活動を実施するために欠かせない消防戦術であり、都道府県や消防機関が保有する消防防災ヘリコプターや都道府県知事からの災害派遣要請を受けて出動する自衛隊ヘリコプターにより実施されている。過去10年間の空中消火の実施状況は、第1-4-1図のとおりとなっている。

第1-4-1図 空中消火の実施状況

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第1-4-1図 空中消火の実施状況の図

(備考)「林野火災対策実態調査」により作成

(2)広域応援・空中消火体制の整備

林野火災の消火活動には、早期消火・延焼拡大防止の観点から、迅速な応急対応や資源の集中的投入が求められることから、消防庁では、都道府県及び消防機関に対し、以下のとおり空中消火を積極的に活用するよう要請している。

〔1〕消防本部は、林野火災を覚知した場合、当該都道府県内の消防防災航空隊へ速やかに第一報を入れ、当該航空隊が出動に備えた消火資機材の装着や準備を早期に行えるようにすること。

〔2〕市町村長は、延焼拡大の危険性、陸上消防部隊の燃焼地点への接近の困難性、人命や家屋への被害拡大の危険性等から、ヘリコプターによる空中消火活動が必要と判断した場合は、当該都道府県内の消防防災ヘリコプターの要請を速やかに行うとともに、火災規模等に応じて、消防組織法第39条に基づく消防相互応援協定による要請、更に同法第44条に基づく大規模特殊災害時における広域航空消防応援によるヘリコプターの要請を求めること。

〔3〕都道府県知事は、消防防災ヘリコプターだけでは消火が困難と判断し、又は困難と見込まれる場合には、時機を逸することなく、自衛隊ヘリコプターの派遣要請を行う等、速やかに災害拡大防止策を講ずること。市町村長は、都道府県知事による当該要請が行えるよう、災害の状況を踏まえ、都道府県知事に対して、迅速的確に要請の求めを行うこと。また、自衛隊が正式派遣要請受理後、速やかに消火活動を実施できるよう、林野火災を覚知した時点から適宜情報提供を行う等、自衛隊と緊密な連携を図ること。

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