平成30年版 消防白書

第5節 風水害対策

[風水害の現況と最近の動向]

1.平成29年中の主な風水害

平成29年中の風水害による人的被害は、死者58人(前年39人)、行方不明者2人(同4人)、重傷者83人(同69人)及び軽傷者522人(同297人)、住家被害は、全壊360棟(同591棟)、半壊2,291棟(同2,602棟)及び一部破損4,662棟(同5,215棟)となっている(第1-5-1図)。

第1-5-1図 風水害による過去10年間の被害状況の推移

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第1-5-1図 風水害による過去10年間の被害状況の推移の図

(備考)「災害年報」により作成

また、平成29年中に発生した台風の数は、平年並の27個(平年値25.6個)であり、このうち日本列島に上陸した台風の数は、平年より多い4個(同2.7個)であった。
なお、平成29年中の主な風水害による被害状況等については、第1-5-1表のとおりである。

第1-5-1表 平成29年中の主な風水害による被害状況等

(平成30年10月31日現在)

第1-5-1表 平成29年中の主な風水害による被害状況等

(備考)「消防庁とりまとめ報」により作成

(1)6月30日からの梅雨前線に伴う大雨及び台風第3号による被害等の状況

6月30日頃から7月6日頃にかけて梅雨前線の活動が活発となり、また、台風第3号が上陸した影響によって、九州から東北地方で大雨・暴風となった。
特に7月5日から6日にかけて梅雨前線が停滞した影響等で線状降水帯が形成・維持されたことにより、猛烈な雨が同じ場所で降り続き、期間中の最大1時間降水量が福岡県朝倉市朝倉で129.5ミリに達したほか、降り始めからの降水量は、朝倉市朝倉で586.0ミリ、大分県日田市日田で402.5ミリ、中国地方でも300ミリを超えるなど、西日本で記録的な大雨となった。
気象庁は、九州北部地方で発生したこの豪雨について「平成29年7月九州北部豪雨」と命名した。
消防庁では、7月3日、全都道府県及び指定都市に対して「梅雨前線及び台風による大雨警戒情報」を発出し、警戒を呼びかけるとともに、5日5時55分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化した。また、同日17時51分に国民保護・防災部長を長とする消防庁災害対策本部に改組(第2次応急体制)するとともに、6日8時00分には消防庁長官を長とする災害対策本部に改組(第3次応急体制)し、災害応急体制を強化した。
なお、この大雨及び台風により、死者42人(広島県2人、福岡県37人、大分県3人)、行方不明者2人(福岡県)、重傷者14人及び軽傷者25人の人的被害のほか、多数の住家被害が発生した。

(2)台風第5号による被害等の状況

台風第5号は、8月5日に屋久島の西海上に停滞した後、進路を北東に変え、6日2時過ぎに屋久島を通過し、同日9時半頃に種子島を通過した。その後、7日10時前に室戸岬を通過し、同日15時過ぎに和歌山県北部に上陸し、8日には日本海に達し温帯低気圧となった。
この台風及び温帯低気圧の影響により、奄美地方では多いところで日降水量が500ミリを超えたほか、西日本から東日本の広い範囲で日降水量が200ミリを超える大雨となった。また、奄美地方から東海地方にかけて、太平洋側を中心に風速20メートル以上の非常に強い風を観測した。
消防庁では、8月4日、全都道府県及び指定都市に対して「平成29年台風第5号の大雨警戒情報」を発出し、警戒を呼びかけるとともに、6日8時00分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化した。
なお、この台風により、死者2人(鹿児島県)、重傷者2人及び軽傷者49人の人的被害のほか、多数の住家被害が発生した。

(3)台風第18号による被害等の状況

台風第18号は、9月17日11時半頃に鹿児島県薩摩半島を通過し、同日12時頃、鹿児島県垂水市付近に上陸した。その後、同日16時半頃に高知県西部に、22時頃には兵庫県明石市付近に再上陸し、18日3時に佐渡島付近で温帯低気圧となった。
この台風及び温帯低気圧、さらには、日本付近に停滞した前線の影響によって全国的に大雨となり、降り始めからの降水量は、宮崎県宮崎市田野で618.5ミリを観測したほか、沖縄地方や九州の多いところでは500ミリを超える大雨となった。また、最大風速は、高知県室戸市室戸岬で39.1メートル、沖縄県宮古島市下地で38.8メートルを記録するなど、沖縄地方から北海道地方の広い範囲で風速20メートル以上の非常に強い風を観測した。
消防庁では、9月15日、全都道府県及び指定都市に対して「平成29年台風第18号の大雨警戒情報」を発出し、警戒を呼びかけるとともに、16日17時00分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化した。
なお、この台風により、死者5人(香川県1人、高知県3人、大分県1人)、重傷者14人及び軽傷者59人の人的被害のほか、多数の住家被害が発生した。

(4)台風第21号による被害等の状況

台風第21号は、10月23日3時頃、超大型で強い勢力を維持したまま静岡県掛川市付近に上陸した後、関東地方を北東へ進み、同日9時に日本の東で温帯低気圧となった。
この台風及び温帯低気圧、さらには、日本付近に停滞した前線の影響により、西日本から東日本、東北地方の広い範囲で大雨となった。特に近畿地方や東海地方の多いところで、降り始めからの降水量が800ミリを超え、和歌山県新宮市新宮では48時間の降水量が888.5ミリを観測し、観測史上第1位の値を更新するなど、記録的な大雨となった。
また、最大風速は、東京都三宅村三宅坪田で35.5メートル、新潟県佐渡市弾崎で31.9メートル(いずれも観測史上1位の値)となるなど、沖縄地方から北海道地方の広い範囲で風速20メートル以上の非常に強い風を観測した。
消防庁では、10月20日、全都道府県及び指定都市に対して「平成29年台風第21号警戒情報」を発出し、警戒を呼びかけるとともに、22日18時00分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化した。
なお、この台風により、死者8人(茨城県1人、富山県1人、長野県1人、三重県2人、大阪府2人、和歌山県1人)、重傷者28人及び軽傷者217人の人的被害のほか、多数の住家被害が発生した。

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