平成30年版 消防白書

2.平成30年1月から10月までの主な風水害

平成30年1月から10月までの主な風水害による被害状況等については、第1-5-2表のとおりである。
なお、「平成30年7月豪雨」については、特集1に記載している。

第1-5-2表 平成30年1月から10月までの主な風水害による被害状況等

(平成30年11月6日現在)

第1-5-2表 平成30年1月から10月までの主な風水害による被害状況等

(備考)「消防庁とりまとめ報」により作成

(1)台風第13号による被害等の状況

台風第13号は、8月9日に関東地方の沿岸を北上し、次第に勢力を弱めながら北東へ進み、10日15時に日本の東海上で温帯低気圧に変わった。
この台風の影響により、埼玉県秩父市浦山で157.0ミリの24時間降水量を記録するなど、関東地方では24時間降水量が100ミリを超える箇所があった。
消防庁では、8月6日、全都道府県及び指定都市に対して「平成30年台風第13号警戒情報」を発出し、警戒を呼びかけるとともに、8日11時00分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化した。
なお、この台風による住家被害はなかったものの、重傷者2人及び軽傷者4人の人的被害が発生した。

(2)台風第20号による被害等の状況

台風第20号は、8月23日21時頃に強い勢力で徳島県南部に上陸した後、同日23時半頃、勢力を維持したまま兵庫県姫路市付近に再上陸した。その後、近畿地方を縦断して、24日21時に日本海北部で温帯低気圧に変わった。
この台風及び温帯低気圧の影響により、奈良県吉野郡上北山村で503.5ミリの24時間降水量を記録するなど、近畿地方では24時間降水量が400ミリを超える箇所があった。また、和歌山県和歌山市友ヶ島で41.9メートル、高知県室戸市室戸岬で39.6メートルの最大風速を記録するなど、四国地方や近畿地方で猛烈な風を観測し、観測史上1位となった箇所があった。
消防庁では、8月20日、全都道府県及び指定都市に対して「平成30年台風第20号警戒情報」を発出し、警戒を呼びかけるとともに、23日6時00分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化した。
また、同日、全都道府県及び指定都市に対して「警戒情報」に基づく適切な対応を改めて要請した。
なお、この台風により、重傷者2人及び軽傷者31人の人的被害のほか、多数の住家被害が発生した。

(3)台風第21号による被害等の状況

台風第21号は、9月4日12時頃に非常に強い勢力で徳島県南部に上陸した後、同日14時頃、勢力を維持したまま神戸市に再上陸し、その後、速度を上げながら近畿地方を縦断して日本海に抜けた後、5日9時には温帯低気圧に変わった。
この台風及び温帯低気圧の影響により、四国、近畿、東海地方で非常に激しい雨が降り、9月3日から5日までの総降水量が四国地方や近畿地方、東海地方において300ミリを超えた箇所や9月の月降水量平年値を超えた箇所があった。
また、高知県室戸市室戸岬で48.2メートル、大阪府田尻町関空島(関西国際空港)で46.5メートルの最大風速を記録するなど、四国地方や近畿地方では猛烈な風を観測し、観測史上第1位となった箇所があった。
さらに、近畿地方では高潮が発生し、大阪市では329センチメートル、神戸市では233センチメートルなど、過去の最高潮位を超える値を観測した。
この強風と高潮により、関西国際空港では広い範囲で滑走路が冠水し、空港が閉鎖されたほか、強風に流されたタンカーが大阪府泉佐野市と空港を結ぶ関西国際空港連絡橋に衝突し、連絡橋が使用不能となる被害が発生した。これにより、空港ターミナ ルビル内に2,000人を超える利用者が一時孤立状態となった。
このほか、強風による電柱の倒壊や高圧線の断線などにより、近畿地方を中心とする広い範囲で多数の停電が発生した。
消防庁では、9月3日、全都道府県及び指定都市に対して「平成30年台風第21号警戒情報」を発出し、警戒を呼びかけるとともに、同日19時00分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化した。
なお、この台風により、死者14人(愛知県2人、三重県1人、滋賀県2人、大阪府8人、和歌山県1人)、重傷者46人、軽傷者897人及び程度不明者11人の人的被害のほか、多数の住家被害が発生した。

(4)台風第24号による被害等の状況

台風第24号は、沖縄の南を北西に進み、9月28日から30日明け方にかけて沖縄地方に接近した後、北東に向きを変え、急速に加速しながら、30日20時頃、大型で強い勢力を維持したまま和歌山県田辺市付近に上陸した。その後、東日本から北日本を縦断し、10月1日12時に日本の東で温帯低気圧に変わった。
この台風の影響により、広い範囲で暴風、大雨、高波や高潮が発生し、鹿児島県奄美市で40.0メートル、沖縄県島尻郡座間味村で38.4メートルの最大風速を記録するなど、沖縄地方から北海道地方の広い範囲で風速20メートル以上の非常に強い風を観測したほか、近畿地方では高潮が発生し、和歌山県御坊市では296センチメートルの高潮位を観測した。
消防庁では、9月28日、全都道府県及び指定都市に対して「平成30年台風第24号警戒情報」を発出し、警戒を呼びかけるとともに、同日13時30分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化した。
なお、この台風により、死者4人(滋賀県1人、京都府1人、鳥取県1人、宮崎県1人)、重傷者25人及び軽傷者188人の人的被害のほか、多数の住家被害が発生した。

(5)台風第25号による被害等の状況

台風第25号は、10月5日に沖縄県久米島の北西を通過し、6日に九州北部地方に最も接近した後、日本海を北東に進み、7日3時には日本海で温帯低気圧に変わった。
この台風及び温帯低気圧の影響により、降り始めからの降水量が高知県仁淀川町鳥形山で420.5ミリ、宮崎県宮崎市田野で394.0ミリを観測するなど、九州地方や四国地方を中心に300ミリを超える大雨となった。また、山形県酒田市飛島で31.4メートル、沖縄県座間味村慶良間で30.5メートルの最大風速を観測するなど、沖縄地方から北海道地方にかけての広い範囲で非常に強い風を観測した。
消防庁では、10月5日、全都道府県及び指定都市に対して「平成30年台風第25号警戒情報」を発出し、警戒を呼びかけるとともに、同日11時30分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化した。
なお、この台風により、重傷者7人及び軽傷者24人の人的被害のほか、多数の住家被害が発生した。

関連リンク

平成30年版 消防白書(PDF版)
平成30年版 消防白書(PDF版) 平成30年版 消防白書 (一式)  平成30年版 消防白書 (概要版)  はじめに  特集1 平成30年7月豪雨の被害と対応  特集2 最近の地震の被害と対応  特集3 消防防災ヘリコプターの安全運航体制の強化&n...
はじめに
はじめに この1年は、西日本を中心に多くの河川の氾濫や土砂崩れ等を引き起こした平成30年7月豪雨、震度6弱を観測した大阪府北部を震源とする地震、平成28年4月の熊本地震以来の震度7を観測した平成30年北海道胆振(いぶり)東部地震など、風水害や地震等の自然災害が各地において発生し、多くの人的・物的被害...
特集
特集 人口減少や高齢化に代表される社会の構造の変化、風水害の多発化・激甚化や災害の多様化等、消防を取り巻く状況は常に変化しています。これらに適切に対応していくとともに、今後発生が予測されている南海トラフ地震や首都直下地震をはじめとする地震災害等に備える必要があります。 平成30年においては、大阪府北...
1.災害の概要
特集1 平成30年7月豪雨の被害と対応 1.災害の概要 (1)気象の状況 平成30年6月28日以降、北日本に停滞していた前線は、7月4日にかけ北海道付近に北上した後、5日には西日本まで南下してその後停滞した。 また、6月29日に発生した台風第7号は、東シナ海を北上し、対馬海峡付近で進路を北東に変えた...