平成30年版 消防白書

3.消防機関における活動対策

(1)マニュアル、ハンドブック、活動要領等の作成・配布

消防庁では、原災法等における事業者の責務や自衛消防組織の設置等を踏まえ、事故等発生時において消防隊員の安全を確保しながら効果的に消防活動が展開できるよう各種マニュアル等を作成し、消防機関等に配布している。
主なものとして、原災法制定等を契機として取りまとめた「原子力施設等における消防活動対策マニュアル」(平成13年3月。以下「マニュアル」という。)、マニュアルを災害現場用にコンパクトにまとめた「原子力施設等における消防活動対策ハンドブック」(平成16年3月。以下「ハンドブック」という。)、除染活動についてまとめた「原子力施設等における除染等消防活動要領」(平成17年3月)等を作成した。
また、平成19年7月の東京電力柏崎刈羽原子力発電所における変圧器火災の教訓を踏まえて強化された原子力発電所等の自衛消防体制との連携を図るとともに、大規模地震時に原子力発電所において火災が発生した場合等の消防体制を強化するため、マニュアルの地震対策編の作成(平成20年2月)、ハンドブックの一部改訂(平成20年2月)及び「現場指揮本部の設置・運営マニュアル」(平成21年12月)の作成を行った。
さらに、福島原発事故等を踏まえ、「消防・救助技術の高度化等検討会(N災害等に関する消防活動対策分科会)」を開催し、政府全体の原子力防災体系の見直しへの対応、福島原発事故等における消防活動事例や近年の技術的進展の反映等の観点から検討を行い、複数のマニュアル等を統合・整理し「原子力施設等における消防活動対策マニュアル」(平成26年3月)を作成した。
そのほか、「医療機関、研究機関その他の放射性同位元素等取扱施設等における消防活動上の留意事項に関する検討会」を開催し、消防機関が放射性同位元素等取扱施設等における火災等の発生時に、放射性同位元素等の特徴に応じた適切な消防活動を行うための資料として活用される報告書を取りまとめるとともに(平成28年3月)、「消防機関と原子力事業者との消防活動に関する連携強化のあり方検討会」を開催し、原子力施設における原災法の適用を受けるに至らない火災等の発生時に、消防機関がより安全かつ的確に消防活動を行うための資料として活用される報告書を取りまとめた(平成29年3月)。

(2)放射性物質事故対応資機材の整備等

消防力の整備指針では、原子力施設の立地など地域の実情に応じて、放射性物質による事故に対応するための資機材を配置するものとされている。また、平成19年7月の東京電力柏崎刈羽原子力発電所における変圧器火災の教訓を踏まえ、平成20年3月に同指針を改正し、原子力発電所や再処理施設の所在する市町村における化学消防車の配置について規定が追加されている。
放射性物質による事故等への対応力の強化のため、消防庁では、平成22年度経済危機対応・地域活性化予備費(平成22年9月24日閣議決定)及び平成23年度補正予算(第1号)を活用し、個人警報線量計等の放射性物質事故対応資機材を消防組織法第50条(国有財産等の無償使用)に基づき、緊急消防援助隊登録消防本部に配備している。

(3)消防職員に対する教育・訓練等

消防職員に対する原子力防災研修等については、消防大学校において、実務講習「緊急消防援助隊教育科NBCコース」を実施している。また、放射性物質による事故発生時の消防活動の基本的事項等、すべての消防職員に習得してほしい事項についてまとめた教材「スタート!RI119~消防職員のための放射性物質事故対応の基礎知識~」(平成23年3月。平成27年3月一部改訂)を作成し、消防機関等に配布している。
このほか、原子力規制庁による消防職員や原子力事業者等を対象とした「原子力施設における火災防護に関する研修」等が開催されており、消防庁では講師派遣等を行っている。

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