平成30年版 消防白書

[原子力災害対策等の課題]

1.福島原発事故を踏まえた今後の取組

(1)避難指示区域の管轄消防本部の支援

避難指示区域の管轄消防本部においては、放射性物質による汚染、消防施設や水利の被災等の厳しい条件の下、消防活動を継続して行っているところであり、各市町村の復旧・復興等と併せて体制の充実強化を図る必要がある。消防庁としても、関係省庁等と連携し、管轄消防本部への支援を引き続き行っていく必要がある。

(2)関係地方公共団体における地域防災計画の見直し等

関係地方公共団体においては、原子力防災全体の見直しと併せ、地域防災計画の見直しが進められているところであるが、原子力災害対策指針上「重点的に原子力災害に特有な対策が講じられる区域(原子力災害対策重点区域)」の範囲の目安が、原子力発電所にあっては従前のおおむね半径8~10kmからおおむね半径30kmに拡大されたことから、新たに当該区域の圏内となった地方公共団体の地域防災計画において原子力災害対策を定めること、広域での避難体制を確保すること等が求められている。
消防庁では、関係省庁と連携し、地域防災計画・避難計画の充実に向けた必要な支援や、訓練等を通じた防災体制の充実強化を支援しているところであり、今後ともこれらの取組を通じて、原子力防災体制の充実強化を図っていく必要がある。

(3)福島原発事故において活動した消防職員の長期的な健康管理

消防庁では、福島原発事故において、国の要請により緊急消防援助隊として3号機の使用済燃料プールへの放水活動等を実施した消防職員の安心に資するため、平成23年度に、当該消防職員についてホールボディカウンター*1等による検査を行うとともに、医療や放射線の専門家等により構成される「福島原発事故において活動した消防職員の長期的な健康管理検討会」において、健康状態に関する把握方法や管理方法等を検討した。さらに、平成24年度からは、「福島原発事故において活動した消防職員の長期的な健康管理審査連絡会」において、当該消防職員に係る定期追加検査の機会の確保及び長期的経過観察により、健康管理の支援を行っており、引き続き支援を実施していく必要がある。

*1 ホールボディカウンター:人の体内に取り込んだ放射性物質から放出されるガンマ線を人体の外側から検出する計測装置

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