平成30年版 消防白書

3.雪害対策の課題

雪害による人的被害の発生を防ぐためには、防災知識の普及啓発等を進めるとともに、次のような対策の推進が求められる。

(1)除雪作業における対策

近年の雪害では、高齢者が亡くなるケースや、屋根の雪下ろし等の除雪作業中に亡くなるケースが目立っている。
このようなことを踏まえ、積雪時においては、複数人での除雪作業の実施や、携帯電話の携行、命綱・ヘルメットの着用、はしごの固定等の実践的な留意点について注意喚起を行うことが重要である。また、高齢者等の要配慮者宅の状況を消防機関や福祉関係機関との連携による巡回等により把握し、除雪が困難又は危険な場合などについては、必要に応じて消防機関、自主防災組織、近隣居住者等との連携協力の下、複数名による除雪作業を行うことや、地域コミュニティの共助による雪処理活動の推進など安全で円滑な雪処理体制の整備を図ること等の適切な対応が必要である。
また、平成26年2月の豪雪災害では、豪雪に不慣れな地域で除雪機材やオペレーター等の人員不足のため除雪作業が追い付かず、記録的な降雪量に対応できない状況となった。そのため、各地方公共団体においては、管理する道路において、他の道路管理者との協議の下、今後の豪雪に備え、優先的な除雪区間を設定するなど、除雪作業の工程等を事前に検討する必要がある。
民間事業者との協定等により、降雪量に応じた除雪機材やオペレーター等の人員を確保するように努めることも重要である。当該地域内の除雪機材、人員のみでは対応が困難な場合に備え、当該地域外の地方公共団体とあらかじめ災害応援協定を締結するなど、速やかに応援・受援ができる体制を整備しておくように努める必要がある。

(2)雪崩等に対する適切な避難勧告等の発令・伝達

降積雪の状況等の情報、過去の雪害事例等を勘案し、雪崩、家屋の倒壊等により、住民の生命・身体に被害が及ぶおそれがあると判断したときは、市町村は遅滞なく避難勧告等を発令する必要がある。なお、あらかじめ、関係機関と協議し、地形、降積雪の状況、過去の雪害事例等を勘案して、雪崩危険箇所等の把握に努め、関係機関をはじめ周辺住民等に周知しておくとともに、要配慮者等に配慮することが重要である。
また、避難勧告等の伝達については、防災行政無線(同報系)、緊急速報メールをはじめ、マスメディアとの連携や広報車、インターネット(ホームページ、SNS等)、コミュニティ放送、Lアラート等多様な伝達手段を活用し、対象地域の住民に迅速かつ的確に伝達する必要がある。

(3)避難体制

市町村は、危険箇所、避難路、指定緊急避難場所等を住民に周知しておくとともに、過去の雪害事例等を踏まえ、雪崩危険箇所等の警戒巡視を行うことが重要である。
また、高齢者・障害者等の要配慮者については、消防団、自主防災組織、近隣居住者等との連携・協力の下、迅速な避難誘導に努める必要がある。

(4)防災体制の確立

災害が発生した場合には、関係機関とも連携し、消防機関の県内相互応援及び緊急消防援助隊の活用等、地方公共団体相互の広域的な応援活動により迅速な救助活動等に万全を期す必要がある。
また、自衛隊の災害派遣要請については、事前に所要の手続や要件等を地方公共団体が確認しておき、関係法令及び地域防災計画等を踏まえ、的確に行えるようにする必要がある。

(5)住民、車両ドライバー等への迅速・的確な情報提供

平成26年2月の豪雪災害においては、道路状況、除雪状況等の情報が、通行中の住民、車両ドライバー等に伝わらなかったため、幹線道路で多くの立ち往生車両が発生し、そのことが除雪作業を妨げるなど事態を深刻化する状況が見受けられた。このため、今後の豪雪災害に備え、住民、車両ドライバー等に降雪状況、道路状況、除雪作業の進捗状況等を迅速・的確に情報提供し、不要不急の外出控え等の呼び掛けができるよう、防災行政無線(同報系)、緊急速報メールをはじめ、マスメディアとの連携や広報車、インターネット(ホームページ、SNS等)、コミュニティ放送、Lアラート等を活用した多様な伝達手段を整備・点検する必要がある。

(6)大雪時等における放置車両対策

平成26年11月に災害対策基本法が改正され、大規模地震や大雪等の災害時には、緊急通行車両の通行ルートを確保するため、道路管理者による放置車両や立ち往生車両の移動が可能となった。
平成26年12月に北日本から西日本にかけて広範囲で雪が降り、普段雪の少ない四国の徳島県、愛媛県を結ぶ国道192号で、立ち往生車両が発生した際、全国で初めて改正法が適用され、車両の移動が行われた。

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