平成30年版 消防白書

第6節 航空消防防災体制

1.航空消防防災体制の現況

消防機関及び都道府県が保有する消防防災ヘリコプターは、救急搬送や救助、林野火災における空中消火等の活動で大きな成果を上げている。特に、台風や豪雨に伴う水害や土砂災害の発生により、陸上交通路が途絶するような事態では、ヘリコプターの高速性・機動性を活用した消防活動は、重要な役割を果たしている。
平成30年7月豪雨では、消防防災ヘリコプターが災害発生直後から出動し、早期に情報収集活動を実施したほか、浸水により孤立した被害者の救出や人員輸送等で活躍し、消防防災ヘリコプターの特性が大いに発揮された。 また、消防庁は、長野県消防防災ヘリコプター墜落事故を契機に、「消防防災ヘリコプターの安全性向上・充実強化に関する検討会」を設置し、安全性向上策、航空消防防災体制の充実策及び消防防災ヘリコプター操縦士の養成・確保策を主なテーマとし、現状の課題の整理と課題解決への取組について検討を行った。
平成30年11月1日現在、消防防災ヘリコプターの配備状況は、消防庁保有が5機、消防機関保有が31機、道県保有が38機、リース機による運航(長野県)1機の計75機となっており、県内に消防防災ヘリコプターの配備のない未配備県域は、佐賀県、沖縄県及び平成30年8月10日に発生した墜落事故のため現在ヘリコプターを保有していない群馬県の3県域である(第2-6-1図)。

第2-6-1図 消防防災ヘリコプターの配備状況

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第2-6-1図 消防防災ヘリコプターの配備状況
消防庁ヘリコプター1号機「おおたか」(東京消防庁)
消防庁ヘリコプター1号機「おおたか」
(東京消防庁)
消防庁ヘリコプター2号機「あたご」(京都市消防局)
消防庁ヘリコプター2号機「あたご」
(京都市消防局)
消防庁ヘリコプター3号機「あらかわ4」(埼玉県)
消防庁ヘリコプター3号機「あらかわ4」
(埼玉県)
消防庁ヘリコプター4号機「みやぎ」(宮城県)
消防庁ヘリコプター4号機「みやぎ」
(宮城県)
消防庁ヘリコプター5号機「おとめ」(高知県)
消防庁ヘリコプター5号機「おとめ」
(高知県)

消防防災ヘリコプターは、多様な消防活動でその能力を発揮しており、平成29年中の全国の出動実績は6,752件で、その内訳は、救急出動3,370件、救助出動2,028件、火災出動1,110件、情報収集・輸送等出動244件となっている(第2-6-2図、第2-6-3図、第2-6-1表)。

第2-6-2図 消防防災ヘリコプターによる災害出動状況(平成25~29年)

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第2-6-2図 消防防災ヘリコプターによる災害出動状況(平成25~29年)

第2-6-3図 消防防災ヘリコプターの災害出動件数の内訳(平成25~29年)

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第2-6-3図 消防防災ヘリコプターの災害出動件数の内訳(平成25~29年)

第2-6-1表 緊急消防援助隊が出動した災害に係る航空小隊の出動件数及び救助・救急搬送人員数(平成25年~29年)

出動件数(件) 救助・救急搬送人員(人)

第2-6-1表 緊急消防援助隊が出動した災害に係る航空小隊の出動件数及び救助・救急搬送人員数(平成25年~29年)

(備考)上表の航空小隊の出動件数については、平成25年までは1日1件として計上していたが、平成26年中に再精査し、緊急消防援助隊として出動した活動種別ごとの件数に改めた。

また、消防防災ヘリコプターの総運航時間は1万8,762時間で、その内訳は、災害出動が5,652時間(30%)、訓練出動が1万621時間(57%)、その他の業務が2,489時間(13%)となっている(第2-6-4図)。

第2-6-4図 消防防災ヘリコプターの運航時間の内訳(平成29年)

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第2-6-4図 消防防災ヘリコプターの運航時間の内訳(平成29年)

(備考)
1「その他の合同訓練」とは、管轄区域内の地上部隊等との連携訓練等をいう。
2「自隊訓練」とは、操縦士の操縦訓練及び航空救助隊員を対象とした通信・救助訓練等をいう。
3「広域応援訓練」とは、相互応援協定及び緊急消防援助隊等に基づく出動を想定した訓練をいう。
4「その他の業務」とは、試験・検査のための飛行、調査・撮影業務及び行政業務をいう。

なお、大規模災害時には、昭和61年5月に定められた「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」に基づき、都道府県域を越えた応援活動が展開されており、平成29年中は、7件の広域航空消防応援が実施された(第2-7-1表)。
また、緊急消防援助隊としての出動は44件となっている。

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