令和3年版 消防白書

3.特定事業所における防災体制

(1)自衛防災組織等の設置

石油コンビナート等災害防止法では、特別防災区域に所在する特定事業所を設置している者(特定事業者)に対し、自衛防災組織の設置、防災資機材等の整備、防災管理者の選任、防災規程の策定等を義務付けている。また、共同防災組織*3、広域共同防災組織*4及び石油コンビナート等特別防災区域協議会(以下「区域協議会」という。)*5の設置について規定している。
令和3年4月1日現在、全ての特定事業所(655事業所)に自衛防災組織が置かれ、72の共同防災組織、11の広域共同防災組織及び58の区域協議会が設置されている。これらの自衛防災組織、共同防災組織及び広域共同防災組織には防災要員5,291人、大型化学消防車85台、大型高所放水車40台、泡原液搬送車128台、大型化学高所放水車114台、大容量泡放水砲24基、油回収船22隻等が整備されている(資料1-3-5)。

(2)大容量泡放射システムの配備

大容量泡放射システムは、浮き屋根式屋外貯蔵タンクの全面火災に対応するため、毎分1万リットル以上の放水能力を有する大容量泡放水砲、送水ポンプ、泡混合装置、ホース等で構成され、大容量泡放水砲1基当たり、従来の3点セット(大型化学消防車、大型高所放水車及び泡原液搬送車)の最大10倍程度の泡放射を行うことができるものである。
現在、毎分1万リットルから4万リットルの放水能力を有する大容量泡放射システムが、全国で12の広域共同防災組織等に配備されている。

大容量泡放射システム
大容量泡放射システム

(3)自衛防災体制の充実

消防庁では、「自衛防災組織等の防災要員のための標準的な教育テキスト」として、防災要員の教育訓練において、視覚的にわかりやすいテキストを作成し、災害発生時の初動対応、公設消防との連携等、防災要員として必要な知識や技術を身につけるに当たり、新任者だけでなく経験者へも活用できる研修モデルを提案し、防災体制の強化を図っている。

*3 共同防災組織:一の特別防災区域に所在する特定事業所に係る特定事業者が、共同して自衛防災組織の業務の一部を行うために設置する防災組織
*4 広域共同防災組織:二以上の特別防災区域にわたる区域に所在する特定事業所に係る特定事業者が、共同して大容量泡放水砲等を用いて行う防災活動に関する業務を行うために設置する広域的な共同防災組織
*5 石油コンビナート等特別防災区域協議会:一の特別防災区域に所在する特定事業所に係る特定事業者が、共同して災害発生防止等に関する自主基準の作成や共同防災訓練等を実施することを目的に設置する協議会

関連リンク

はじめに
はじめに 昨年は、静岡県熱海市土石流災害や8月11日からの大雨などの自然災害に見舞われ、多くの人的・物的被害が生じました。 また、新型コロナウイルス感染症への対応として、救急隊員の感染防止対策の徹底や、ワクチン接種業務への救急救命士の活用など様々な対応が求められました。 気候変動...
1.令和3年7月静岡県熱海市土石流災害による被害及び消防機関等の対応状況
特集1 最近の大規模自然災害等への対応 1.令和3年7月静岡県熱海市土石流災害による被害及び消防機関等の対応状況 (1)災害の概要 6月末から日本付近に停滞した梅雨前線の影響で、西日本から東北地方の広い範囲で大雨となり、各地で河川氾濫、浸水、土砂崩れ等が発生した。 静岡県熱海市では、降り始めから7月...
2.令和3年8月11日からの大雨による被害及び消防機関等の対応状況
2.令和3年8月11日からの大雨による被害及び消防機関等の対応状況 (1)災害の概要 ア 気象の状況 8月11日から21日にかけて、日本付近に停滞した前線に暖かく湿った空気が断続的に流れ込んだ影響で前線の活動が活発となり、西日本から東日本の広い範囲にかけて大雨となった。 特に、8月12日から14日は...
3.栃木県足利市林野火災による被害及び消防機関等の対応状況
3.栃木県足利市林野火災による被害及び消防機関等の対応状況 (1)災害の概要 ア 火災の概要 令和3年2月21日15時20分頃、栃木県足利市西宮町地内にある両崖山山頂付近の山林(通称「紫山」)から出火した。管轄の足利市消防本部は同日の15時36分に覚知し消火活動に当たったが、強風注意報が発表された2...