令和3年版 消防白書

2.地下施設等の災害対策の現況と課題

(1)鉄道トンネル及び道路トンネル

鉄道トンネル(地下鉄道トンネルを含む。)、道路トンネル及び今後開発が予想される大深度地下施設は、出入口が限定された閉鎖性の高い場所であり、一旦火災等が発生し、濃煙、熱気が充満した場合には、利用者の避難・誘導、消防隊の消火・救助活動等に種々の制約、困難が伴うこととなることから、適切な防災安全対策を講じていく必要がある。
鉄道トンネルに関しては、国土交通省と連携し、トンネル等における列車火災事故の防止に関する具体的対策を示すことにより、消火、避難設備等の設置の促進及び所在市町村における火災事故防止対策の強化を図っている。
道路トンネルに関しては、関係省庁とも協力して、「トンネル等における自動車の火災事故防止対策」、「道路トンネル非常用施設設置基準」により道路トンネルに係る火災事故防止対策の充実に努めている。

(2)大深度地下空間

公共の利益となる事業による大深度地下*1の使用に関し、当該事業の円滑な遂行と大深度地下の適正かつ合理的な利用を図ることを目的とした大深度地下の公共的使用に関する特別措置法が平成12年(2000年)5月に制定され、同法に定める対象地域である首都圏、中部圏及び近畿圏において、関係省庁及び関係地方公共団体で構成する大深度地下使用協議会が、それぞれ開催されている。
大深度地下空間で災害が発生すると、地下の深部に多数の利用者が取り残されるおそれがあり、従来の施設と比較して消火活動や救助活動がより困難になることが予想されている。
このため、消防庁、国土交通省等関係機関において大深度地下施設の用途、深度、規模等に応じた安全対策について検討を行い、平成16年2月に「大深度地下の公共的使用における安全の確保に係る指針」を取りまとめており、これを踏まえ確実に安全対策が講じられるよう、適切な助言等を行っていく必要がある。
また、中央新幹線(品川・名古屋間)は、大都市圏において大深度地下を利用した区間があるため、万一災害等が発生した場合に、迅速かつ安全に乗客を避難させ、的確な消防活動を行えるように対策を講ずる必要がある。そのため、消防庁では、中央新幹線の防災対策等について情報共有を図ることを目的に、東海旅客鉄道株式会社及び中央新幹線沿線消防本部から構成される連絡会議を開催している。

*1 大深度地下:地下40m以深又は支持地盤上面から10m以深のいずれか深い方の地下

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