令和3年版 消防白書

2.PFOSを含有する泡消火薬剤の排出抑制について

泡消火設備は、駐車場や危険物施設等において用いられている消火設備である。しかしながら、一部の泡消火薬剤に用いられている有機フッ素化合物の一種であるペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS*7)又はその塩(以下「PFOS等」という。)が、難分解性、生物蓄積性、毒性及び長距離移動性を有する残留性有機汚染物質から人の健康及び環境を保護することを目的とした残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約において、製造及び使用等を制限する物質として追加された。
これを受け、我が国においても、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令等が改正され、その製造、輸入等が原則として禁止されるとともに、業として泡消火薬剤等を取り扱う際には、厳格な管理や保管容器への表示等の義務が課されることとなった。
また、令和元年5月には、一部の泡消火薬剤に用いられている有機フッ素化合物の一種であるペルフルオロオクタン酸(PFOA*7)又はその塩及びPFOA関連物質も、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約において製造及び使用等の廃絶に向けた取組を行う物質として追加することが決定された。このことから、我が国においても、PFOA又はその塩について、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令等が改正されたところである。
さらに、PFOS等含有泡消火薬剤は10年前に製造が停止されており、経年劣化が危惧されることから、消防庁ではPFOS等含有泡消火薬剤を保有する消防機関に対して、令和4年度末までに全て廃棄する更新計画の策定を依頼し、その更新に要する経費については令和2年度から令和4年度まで特別交付税措置を講ずることとしている。
消防庁としては、関係省庁やメーカー団体等と連携し、上記法令の周知徹底を図るとともに、令和3年5月に泡消火設備の点検基準を改正し、泡放射によらない方法により点検を実施することを認める等の排出抑制を推進するための対策を講じた。また、このような状況を踏まえ、駐車場等において設置を義務付けている特殊消火設備の技術基準について検討する等の対応を行っている。

*7 PFOS、PFOA:Perfluorooctane sulfonic acid・Perfluorooctanoic acidの略称である。ストックホルム条約において、難分解性、生物蓄積性、毒性及び長距離移動性を有する残留性有機汚染物質として、規制対象に指定された。

関連リンク

はじめに
はじめに 昨年は、静岡県熱海市土石流災害や8月11日からの大雨などの自然災害に見舞われ、多くの人的・物的被害が生じました。 また、新型コロナウイルス感染症への対応として、救急隊員の感染防止対策の徹底や、ワクチン接種業務への救急救命士の活用など様々な対応が求められました。 気候変動...
1.令和3年7月静岡県熱海市土石流災害による被害及び消防機関等の対応状況
特集1 最近の大規模自然災害等への対応 1.令和3年7月静岡県熱海市土石流災害による被害及び消防機関等の対応状況 (1)災害の概要 6月末から日本付近に停滞した梅雨前線の影響で、西日本から東北地方の広い範囲で大雨となり、各地で河川氾濫、浸水、土砂崩れ等が発生した。 静岡県熱海市では、降り始めから7月...
2.令和3年8月11日からの大雨による被害及び消防機関等の対応状況
2.令和3年8月11日からの大雨による被害及び消防機関等の対応状況 (1)災害の概要 ア 気象の状況 8月11日から21日にかけて、日本付近に停滞した前線に暖かく湿った空気が断続的に流れ込んだ影響で前線の活動が活発となり、西日本から東日本の広い範囲にかけて大雨となった。 特に、8月12日から14日は...
3.栃木県足利市林野火災による被害及び消防機関等の対応状況
3.栃木県足利市林野火災による被害及び消防機関等の対応状況 (1)災害の概要 ア 火災の概要 令和3年2月21日15時20分頃、栃木県足利市西宮町地内にある両崖山山頂付近の山林(通称「紫山」)から出火した。管轄の足利市消防本部は同日の15時36分に覚知し消火活動に当たったが、強風注意報が発表された2...