令和5年版 消防白書

6. 令和5年台風第13号に係る被害及び消防機関等の対応状況

(1)災害の概要

ア 気象の状況

令和5年9月8日から9日にかけて、台風第13号の中心から離れた関東地方及び東北地方の太平洋側を中心に大雨となった。東京都(伊豆諸島)、千葉県、茨城県及び福島県では、8日に線状降水帯が発生し、1時間に80ミリ以上の猛烈な雨が降った地点があった。これらの地域では、観測史上1位の1時間降水量を観測した地点があったほか、7日から9日にかけての総降水量が、400ミリを超えた地点や平年の9月の月降水量を超えた地点があった。 

イ 被害の状況

この記録的な大雨により、東北地方及び関東地方を中心に河川氾濫、浸水、崖崩れ等が発生し、死者3人、負傷者18人の人的被害が発生した。
また、住家被害については、福島県で1,806棟、茨城県で1,618棟、千葉県で2,669棟など、計6,096棟となっている(令和5年11月15日現在)。

 

(2)政府の主な動き及び消防機関等の活動

ア 政府の主な動き

政府においては、9月7日15時00分に情報連絡室を設置するとともに、関係省庁災害警戒会議を開催し、各省庁の初動体制を確認し、自治体や国民に対し大雨への警戒を呼び掛けた。

イ 消防庁の対応

消防庁においては、9月7日15時00分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室(第1次応急体制)を設置し情報収集体制の強化を図るとともに、同日15時39分に、都道府県及び指定都市に対し「令和5年台風第13号についての警戒情報」を発出し、自治体に対して災害対応に万全を期するよう呼び掛けた。
また、この大雨により、茨城県日立市では、浸水想定区域外にある市役所本庁舎が浸水し、非常用電源が稼働しない事案が発生した。
この事案を受けて、消防庁では、自治体に対し、災害対策本部設置庁舎が浸水想定区域外であっても、非常用電源について浸水対策等の要否を確認し、必要に応じ対応いただくことを周知する通知を発出した。 

ウ 被災自治体の対応

この大雨により、福島県、茨城県及び千葉県の3県が災害対策本部を設置し、土砂災害が発生した茨城県は、自衛隊に対し災害派遣要請を行った。
また、被災市町村では、住民に対し、大雨による家屋の浸水や土砂災害への警戒を促すとともに、順次避難指示等を発令し、早期の避難を呼び掛けた。
なお、茨城県日立市では、市役所本庁舎の地下にある電源設備が浸水して停電したため、災害対策本部を消防庁舎に移して対応した。 

エ 消防機関の活動

(ア)消防本部
被害を受けた地域を管轄する消防本部では、多数の119番通報が入電し、直ちに救助・救急等の活動に当たった。
また、福島県等の消防防災ヘリコプターが情報収集活動に当たったほか、茨城県消防防災ヘリコプターにあっては、日立市内の孤立地域への物資輸送も行った。

 

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 救助活動の様子  (福島県提供)

救助活動の様子

(福島県提供)

 

(イ)消防団
福島県及び千葉県内の市町村をはじめ、甚大な被害に見舞われた多くの市町村において、消防団は、危険箇所の巡視・警戒、早期避難の呼び掛け、住民の避難誘導及び消防車両等による排水作業等を行ったほか、災害廃棄物運搬等の災害復旧活動を長期間にわたり実施した。

 

 

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消防団による排水作業の様子  (千葉県九十九里町提供)
消防団による排水作業の様子

(千葉県九十九里町提供)

 

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