令和5年版 消防白書

5. 令和5年台風第7号に係る被害及び消防機関等の対応状況

(1)災害の概要

ア 気象の状況

令和5年8月15日は台風第7号の進路に近い西日本の地域を中心に大雨となり、鳥取県、岡山県、香川県及び岩手県では平年の8月の月降水量の2倍を超える大雨となった。気象庁は同日16時40分に鳥取県鳥取市に大雨特別警報を発表した。
また、8月11日には東京都(小笠原諸島)で、14日から15日にかけては近畿地方や東海地方で、最大瞬間風速が30メートルを超える風が吹いた地点があった。

イ 被害の状況

この記録的な大雨により、東海地方から中国地方までの広い範囲で河川氾濫、浸水、崖崩れ等が発生し、負傷者70人の人的被害が発生した。
また、住家被害については、京都府で405棟、兵庫県で157棟など、計929棟となっている(令和5年11月15日現在)。 

(2)政府の主な動き及び消防機関等の活動

ア 政府の主な動き

政府においては、8月10日15時00分に情報連絡室を設置するとともに、関係省庁災害警戒会議を開催し、各省庁の初動体制を確認し、自治体や国民に対し大雨への警戒を呼び掛けた。
その後、8月14日には関係省庁災害警戒会議を開催し、既に判明した被害及び対応状況について関係省庁間の情報共有と今後の対応の確認を行うとともに、改めて自治体や国民に対し大雨への警戒を呼び掛けた。
8月15日16時40分に鳥取県鳥取市に大雨特別警報が発表されたことを踏まえ、同時刻に官邸連絡室に改組した。

イ 消防庁の対応

消防庁においては、8月10日15時00分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室(第1次応急体制)を設置し情報収集体制の強化を図るとともに、同日15時25分に都道府県及び指定都市に対し「令和5年台風第7号についての警戒情報」を発出し、自治体に対して災害対応に万全を期するよう呼び掛けた。
また、8月14日にも警戒情報を発出し、最新の気象情報を提供するとともに、大雨に対する更なる警戒を呼び掛けた。
さらに、8月15日16時40分に鳥取県鳥取市に大雨特別警報が発表されたことを踏まえ、国民保護・防災部長を長とする消防庁災害対策本部(第2次応急体制)に改組し応急体制の強化を行うとともに、大雨特別警報が発表された鳥取県に対し迅速な初動対応及び被害報告を要請した。 

ウ 被災自治体の対応

この大雨により、岐阜県、愛知県、三重県、鳥取県及び岡山県の5県が災害対策本部を設置した。
また、被災市町村では、住民に対し、大雨による家屋の浸水や土砂災害への警戒を促すとともに、順次避難指示等を発令し、早期の避難を呼び掛けた。 

エ 消防機関の活動

(ア)消防本部
被害を受けた地域を管轄する消防本部では、多数の119番通報が入電し、直ちに救助・救急等の活動に当たった。
また、鳥取県等の消防防災ヘリコプターが情報収集活動等に当たった。

 

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救助活動の様子  (綾部市消防本部提供) 

救助活動の様子

(綾部市消防本部提供)

 

(イ)消防団
京都府及び鳥取県内の市町村をはじめ、甚大な被害に見舞われた多くの市町村において、消防団は、危険箇所の巡視・警戒、住民の避難誘導及び消防車両等による排水作業等を行ったほか、土砂撤去等の災害復旧活動を実施した。

 

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