2. 新型コロナウイルス感染症対策に係る消防機関等の取組
(1)具体的な取組
消防庁においては、新型コロナウイルス感染症対策について累次の通知等を発出し、消防機関の円滑な活動の推進や、国民の安全確保に努めた。
ア 救急業務における対応
消防庁においては、救急隊員が行う感染防止対策などの具体的手順の徹底や、保健所等関係機関との密な情報共有、救急搬送困難事案の抑制に向けた医療関係機関との連携協力等について、消防機関に要請した。
(ア)救急隊員への注意喚起等
5類移行後のコロナ傷病者に対する感染防止対策については、消防庁から消防機関に以下のことを周知した。
・感染防止対策はこれまでと変わらないものであるため、引き続き「救急隊の感染防止対策マニュアル(Ver.2.1)」を参考に救急隊の感染防止対策を徹底すること
・今後も、医療機関における感染防止対策や最新の知見を踏まえ、情報提供等を行う予定であること
(イ)救急搬送困難事案への対応
消防庁では、「新型コロナウイルス感染症に伴う救急搬送困難事案に係る状況調査について(依頼)」(令和2年4月23日付け通知)を発出し、全国52消防本部を調査対象として、救急搬送困難事案の件数を把握している。これを踏まえ、消防庁において救急搬送困難事案の状況を厚生労働省と共有するとともに、都道府県消防防災主管部(局)に対し、衛生主管部(局)等との情報共有や地域における搬送受入れ体制の整備・改善の検討等に活用するよう依頼している。
当該調査を通じて把握した5類移行後の救急搬送困難事案の発生件数を見ると、令和5年7月第1週まではほぼ横ばいで推移した。そして、7月第2週から増加し、9月第1週からは減少傾向となった(特集2-3図)。救急搬送困難事案の調査結果は、消防庁ホームページ上の特設サイト「新型コロナウイルス感染症対策関連」を毎週更新し、最新の情報を掲載している。
5類移行後、消防庁から消防機関に対して、関係通知等を発出しており、その主な対応は次のとおりである。
特集2-3図 各消防本部からの救急搬送困難事案に係る状況調査の結果(各週比較)
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a 令和5年5月の5類移行に伴う対応
令和5年3月17日付け事務連絡により、5類移行に伴う消防機関の対応を消防機関に周知するとともに、5類移行後の救急搬送に支障が生じないよう、救急搬送体制の確保に努めるよう要請した。
令和5年3月24日付け事務連絡により、消防機関が医療機関等情報支援システム(G-MIS)のIDを取得するための手続の方法を周知し、5類移行後も、円滑な救急搬送体制を確保するために、受入れ可能な医療機関情報や空床情報等を取得することが重要であることを周知した。
b 令和5年夏の感染拡大を見据えた対応
令和5年5月19日付け事務連絡により、5類移行後の全国52消防本部の救急に係る実態調査結果を消防機関に共有し、今後の救急搬送困難事案への対応の再確認を要請した。
令和5年7月26日付け事務連絡により、救急搬送困難事案が急増した時の取組について、消防本部の優良事例を消防機関に共有するとともに、感染症法に基づく都道府県連携協議会等を活用し、消防機関と医療関係機関が連携して、今後の対応を準備するよう要請した。
イ 消防団活動における感染症対策
消防団員は、主に災害時の避難誘導や避難所運営支援の際などに、コロナ患者と接することが想定される。
5類移行に伴い、令和5年3月10日付け事務連絡により、消防団活動における今後のマスク着用について、重症化リスクの高い人等に感染させない配慮は継続しながら、個人の判断に委ねることが基本となることなどを周知した。
ウ 救急救命士によるワクチン接種
令和3年6月に「新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を推進するための各医療関係職種の専門性を踏まえた対応の在り方等について」(令和3年6月4日付け厚生労働省通知)が発出され、一定の要件の下、時限的・特例的な取扱いとして、救急救命士によるワクチン接種が可能になった。令和5年3月に「新型コロナウイルス感染症に関するPCR検査のための鼻腔・咽頭拭い液の採取の歯科医師による実施及びワクチン接種のための筋肉内注射の歯科医師、臨床検査技師及び救急救命士による実施について(周知)」(令和5年3月31日付け厚生労働省通知)が発出され、ワクチン接種を進めるために、必ずしも医師や看護師等が確保できない状況ではなくなっていることから、令和5年4月1日以降、時限的・特例的な取扱いを要する状況は脱したと思料する旨の見解が示された。
なお、令和4年12月2日に成立した感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律では、救急救命士によるワクチン接種に係る規定が設けられたところであり、当該規定は、令和6年4月1日に施行される。
エ 災害対応に係る感染症対策
(ア)5類移行に伴う避難所における対応
消防庁においては、5類移行を踏まえ、「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う避難所における新型コロナウイルス感染症の感染対策等について」(令和5年4月28日付け通知)を発出し、関係部局間でのコロナ患者に関する情報共有や避難所における感染対策等について周知した。
(イ)自然災害発生時の救助活動等及び緊急消防援助隊活動時における感染防止
救急以外の消防活動においても、万全な感染防止対策により、消防隊員の感染防止に努めることが重要である。
令和2年に出水期における河川の氾濫及び土砂災害による大規模自然災害に備え、自然災害発生時の救助活動等及び大規模災害発生時の都道府県を越えた広域応援を行う緊急消防援助隊活動時における感染防止対策について通知を発出し、各都道府県消防防災主管部(局)長及び全国の消防本部に対して周知した。
5類移行後も、引き続き、感染防止に係る対応を求めている。
(2)おわりに
新型コロナウイルス感染症は、感染症法上の位置付けの変更により5類に移行となったが、移行後も感染防止対策については、これまでと変わらないものである。引き続き、消防庁においては、今回の経験や知見を踏まえ、厚生労働省等の関係機関と連携し、今後の感染症に係る対応の充実・強化を図っていく。