令和5年版 消防白書

特集5 消防防災分野におけるDXの推進

1. デジタル社会の実現に向けた政府の動き

政府は、令和2年12月25日に閣議決定した「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」において、デジタル社会の目指すビジョンとして、「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」を掲げ、このような社会を目指すことにより、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を進めることにつながるとしており、令和5年6月9日に閣議決定した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(以下、本特集において「重点計画」という。)においても、同様の考え方が示されている。
また、令和4年6月7日には、地方からデジタルの実装を進め、新たな変革の波を起こし、地方と都市の差を縮めていくことで、世界とつながる「デジタル田園都市国家構想」の実現に向け、「デジタル田園都市国家構想基本方針」が閣議決定されている。同基本方針においては、デジタルは地方の社会課題(人口減少、過疎化、産業空洞化等)を解決するための鍵であり、新しい付加価値を生み出す源泉であるとし、デジタルインフラを急速に整備し、官民双方で地方におけるデジタル・トランスフォーメーション(以下、本特集において「DX」という。)を積極的に推進することとしている。
消防防災分野についても、令和5年6月16日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2023」(以下、本特集において「骨太の方針2023」という。)において、「消防防災分野のDX(中略)の推進による「デジタル等新技術の活用による国土強靱化施策の高度化」」が掲げられているほか、「重点計画」や「統合イノベーション戦略2023」(令和5年6月9日閣議決定)、「国土形成計画(全国計画)」(令和5年7月28日閣議決定)、「国土強靱化基本計画」(令和5年7月28日閣議決定)においても、DXの推進による緊急消防援助隊の指揮支援体制の強化などの施策が位置付けられるなど、消防庁としても政府の一員として積極的なDXの推進が求められている。

 

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