令和6年版 消防白書

3.消防の広域化の必要性と効果

(1)広域化の必要性

日本の総人口は、減少が継続しており、地域の消防に係る人的基盤が将来的に弱まっていくおそれがある。
また、近年、大規模な自然災害が激甚化・頻発化していることに加え、近い将来に大規模地震の発生が懸念されている。
さらには、新型コロナウイルス感染症感染拡大により、救急搬送困難事案が多発し、消防本部内においてもクラスターが発生するなど、消防・救急体制への負担が蓄積した。
これらのことから、消防本部、とりわけ小規模消防本部が中長期的にこれまでと同程度の消防力を確保していくため十分な消防体制を確立する必要があるほか、大規模災害発生時の初動体制の確保や、応援部隊との効果的な連携体制の構築、新たな感染症等に強い消防体制の確保、DXの進展による専門人材の育成・確保に向け、広域化等による体制強化が必要となっている。

(2)広域化の効果

消防の広域化により、消防本部の規模が拡大することで、複数の部隊による迅速な消防活動が可能となるほか、予防業務等への職員の専任配置による業務の高度化が図られる。また、消防施設・設備等の整備に係る経費削減等の効果が得られる。
大規模災害時においても、要員配置の柔軟化が図られ、即応体制の構築が可能となり、また、組織の一体化による統一指揮下での部隊運用が行われること等により、迅速かつ的確な災害対応につながるなどの効果が得られる。

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