令和6年版 消防白書

4.関係機関の取組

(1)消防庁の取組

ア 検討に対する支援

消防庁では、広域化基本指針の策定と合わせ、都道府県及び市町村における広域化の取組を支援するために、消防庁長官を本部長とする消防広域化推進本部を設置して広域化を推進しているところであり、消防広域化推進アドバイザー*1の派遣、広域化後の効果等の分析が可能な消防用車両出動シミュレーションシステムの提供などの支援を行っている。

イ 財政措置

消防の広域化及び連携・協力に伴って必要になる経費に対して、その運営に支障の生じることがないよう、必要な財政措置を講じている。
広域化については、広域消防運営計画等に基づき必要となる消防署所等の増改築及び再配置が必要と位置付けられた消防署所等の新築並びに消防署所等の統合による効率化等により機能強化を図る消防用車両等の整備について緊急防災・減災事業債(充当率100%、交付税算入率70%)の対象としている。
連携・協力については、連携・協力実施計画に基づき必要となる消防指令センターの整備、消防用車両等の整備及び訓練施設の整備について、緊急防災・減災事業債の対象としている(第2-2-2図)。

第2-2-2図 消防の広域化及び連携・協力に対する財政措置

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ウ 更なる広域化等の推進のための検討

人口減少等の社会環境の変化に加え、令和6年能登半島地震のような甚大な被害をもたらす地震の発生が近い将来にも見込まれているなど、今後の災害リスクの高まりも指摘される状況を踏まえると、国、都道府県及び市町村がそれぞれの役割を果たしつつ、相互に連携を図りながら広域化を通じた消防本部の体制強化に取り組んでいく必要がある。こうしたことから、消防庁では、令和6年3月29日に広域化基本指針を改正し、推進期限を令和11年4月1日まで延長することとし、推進方策を以下のように示した。

① 消防組織法において都道府県が定めるよう努めることとされている推進計画に、地域の核として広域化の検討を主導する「中心消防本部」について定めることを可能とした。

② 連携・協力について、多様かつ複数の取組は広域化の実現に繋がることから積極的に推進することとしたうえで、[1]指令の共同運用、[2]消防用車両、資機材等の共同整備、[3]高度・専門的な違反処理や特殊な火災原因調査等の予防業務、[4]特殊な救助等専門部隊の共同設置、[5]専門的な人材育成の推進、[6]訓練の定期的な共同実施、[7]現場活動要領の統一、といった7つの連携・協力の類型を示した。

③ ①及び②の方策を踏まえ、広域化及び連携・協力に係る消防本部等の取組に対し、所要の地方財政措置を講ずることとした。

(2)都道府県の取組

ア 推進計画の概要

都道府県は、消防本部、市町村等と緊密に連携し、検討した上で推進計画の策定を行うよう努めることとされている。
推進計画には、広域化対象市町村の組合せや、連携・協力の対象となる市町村を定めることになる。

イ 都道府県の支援策

広域化を推進していく観点から、[1]広域化の機運醸成や効果についての勉強会等の開催、[2]広域化を具体的に進めるための協議会や協議組織への職員の派遣、[3]独自の広域化推進のための財政支援措置等を実施している都道府県が存在する。
財政支援措置としては、業務の統一に必要となるシステム変更事業を対象とした補助制度や、緊急防災・減災事業債を活用する高機能消防指令センター整備事業を対象として、元利償還金に対する交 付税措置の対象となる部分を除いた事業費について補助する制度などがある。
都道府県においては、市町村に対し将来的な人材不足や財政見通し等を踏まえた中長期的な消防力のシミュレーション結果を提示し、他の消防本部と比較整理して説明することなどを通じ、広域化の機運の醸成を図ることや、関係市町村等の協議の場の設置を主導するなど積極的に関与することが期待される。

(3)市町村の取組

消防組織法により、都道府県の推進計画に定められた広域化対象市町村は、消防の広域化を行う際には、協議により、広域化後の消防の円滑な運営を確保するための広域消防運営計画を作成することとされている。
広域化に向けた検討を行う市町村は、市町村長部局、消防本部、市町村議会議員等から構成される協議会等の検討組織を設置し、[1]広域化後の消防の円滑な運営を確保するための基本方針、[2]消防本部の位置及び名称、[3]市町村の防災に係る関係機関相互間の連携の確保に関する事項、[4]構成市町村の負担金割合方式、職員の任用方式や給与の統一方法等、広域消防運営計画や組合規約等の作成に必要な事項を中心に協議を行うことが考えられる。
都道府県の推進計画に「中心消防本部」が定められる場合、当該中心消防本部においては、広域化に向けた論点整理や消防本部間及び関係市町村間での合意形成について主導することが期待される。

*1 消防広域化推進アドバイザー:既に広域化を実現した消防本部や関係市町村の幹部職員等で、広域化の推進に必要な知識・経験を持つ者の中から、消防庁が選定し登録する。都道府県等の要望に応じて派遣し、支援活動を行う。

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