令和6年版 消防白書

3.消防と医療の連携

(1)傷病者の搬送及び傷病者の受入れの実施に関する基準

傷病者の搬送及び受入れの円滑な実施を図るため、消防法では、都道府県における「傷病者の搬送及び傷病者の受入れの実施に関する基準」(以下、本節において「実施基準」という。)の策定、実施基準に関する協議会(以下、本節において「法定協議会」という。)の設置が義務付けられている。各都道府県は、法定協議会において実施基準に基づく傷病者の搬送及び受入れの実施状況を調査・検証した上で、その結果を実施基準の改善等に結び付けていくことが望まれる。
消防庁としては、各都道府県の取組状況や課題を把握するとともに、効果的な運用を図っている地域の取組事例等を広く把握するなどして、フォローアップに取り組んでいる。
また、実施基準に基づく救急搬送が実施されることとなったことを踏まえ、地域における救急医療体制の強化のため、地方公共団体が行う私的二次救急医療機関*2への助成に係る経費について、特別交付税措置を講じている。

(2)救急医療体制

傷病者の主な搬送先となる救急病院及び救急診療所の告示状況は、令和6年4月1日現在、全国で4,164か所となっている(資料2-5-11)。
初期救急医療体制としては、休日、夜間の初期救急医療の確保を図るための休日夜間急患センターが550か所(令和4年4月1日現在)、第二次救急医療体制としては、病院群輪番制病院及び共同利用型病院が2,747か所(令和4年4月1日現在)、第三次救急医療体制としては、救命救急センターが307か所(令和6年8月1日現在)整備されている。また、救命救急センターのうち広範囲熱傷、指肢切断、急性中毒等の特殊疾病傷病者に対応できる高度救命救急センターは、50か所(令和6年8月1日現在)整備されている。
救急告示制度による救急病院及び救急診療所の認定と初期・第二次・第三次救急医療体制の整備については、都道府県知事が定める医療計画の下で一元的に実施されている。
これらの救急医療体制の下、消防法の規定により都道府県が策定する実施基準では、傷病者の状況に応じた医療の提供が可能な医療機関のリストが作成されており、消防機関はそのリストを活用して、救急業務を行っている。

(3)救急搬送における医療機関の受入れ状況

消防庁では、重症以上傷病者、産科・周産期傷病者、小児傷病者及び救命救急センターへの搬送傷病者を対象として、救急搬送における医療機関の受入れ状況等について、調査を実施している。
「令和5年中の救急搬送における医療機関の受入れ状況等実態調査」では、令和4年中の同調査と比較し、小児傷病者の搬送事案において、照会回数4回以上の事案の件数は増加したが割合は減少し、重症以上傷病者、産科・周産期傷病者及び救急救命センターへの搬送事案においては、件数及び割合が減少した(資料2-5-12)。また、現場滞在時間30分以上の事案については、全ての項目において件数及び割合が減少した(資料2-5-13)。

*2 私的二次救急医療機関:二次救急医療機関のうち、国公立医療機関及び公的医療機関等以外の救急告示医療機関のこと。

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