令和6年版 消防白書

2.火災原因調査等及び災害・事故への対応

(1)火災原因調査及び危険物流出等の事故原因調査等

ア 火災原因調査及び危険物流出等の事故原因調査等の実施

消防研究センターでは、大規模あるいは特異な火災・危険物流出等の事故を中心に、全国各地においてその原因調査を実施している。また、消防本部に対する技術支援として、消防本部から依頼を受け、原因究明のための鑑識*3、鑑定*4及び現地調査を実施している。
令和5年度から令和6年度(9月30日現在)までに実施した主な火災原因調査は第6-2表のとおりである。また、令和5年度に行った鑑識は65件、鑑定は55件、令和6年度(9月30日現在)に行った鑑識は60件、鑑定は23件である。

イ 災原因調査及び危険物流出等の事故原因調査の高度化に向けた取組

消防研究センターでは、走査型電子顕微鏡、デジタルマイクロスコープ、X線CT撮影装置、ガスクロマトグラフ質量分析計、フーリエ変換赤外分光光度計、X線回折装置等の調査用の分析機器をはじめとして、研究用の分析機器も含めて、観察する試料や状況に応じて使用する機器を選択し、火災や危険物流出等事故の原因調査を行っている。また、従来の研究や調査から得られた知見を取り入れ、更なる原因調査の高度化に向けた取組も行っている。
さらに、高度な分析機器を積載した機動鑑識車(第6-8図)を整備しており、火災や危険物流出等事故の現場において迅速に高度な調査活動を可能とするとともに、消防本部で実施する鑑識・鑑定の支援においても活用している。令和5年5月に開催されたG7広島サミットでは、高性能分析器を搭載した機動鑑識車と職員4人を現地統括警戒本部に派遣し、関連施設での事案発生時に速やかに原因調査業務に着手できるよう警戒活動を実施した。

第6-2表 火災原因調査及び危険物流出等の事故原因調査の現地調査実施事案一覧(令和5年度から令和6年度(9月30日現在)までの調査実施分)

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第6-8図 機動鑑識車

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(2)災害・事故への対応

消防研究センターでは、火災原因調査及び危険物流出等の事故原因調査に加え、災害・事故における消防活動において専門的知識が必要となった場合には、職員を現地に派遣し、必要に応じて助言を行う等の消防活動に対する技術的支援も行っている。また、消防防災の施策や研究開発の実施・推進にとって重要な災害・事故が発生した際にも、現地に職員を派遣し、被害調査や情報収集等を行っている。
災害・事故における消防活動に対する主な技術的支援としては、令和6年1月1日の能登半島地震に伴い石川県輪島市及び珠洲市で発生した土砂災害において、職員を現地に派遣するなどして、救助活動の安全確保等に関する技術的支援を行った。
研究開発に係る災害・事故の調査としては、令和6年能登半島地震により、石川、富山、新潟県内の石油タンク等の危険物施設で発生した被害につき、危険物施設の地震被害予測高精度化を目的とした現地調査を行った。

*3 鑑識:火災の原因判定のため具体的な事実関係を明らかにすること。
*4 鑑定:科学的手法により、必要な試験及び実験を行い、火災の原因判定のための資料を得ること。

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