3.政府の取組

大きな被害をもたらしたこの豪雨災害を踏まえ、今後の風水害対策の参考とするため、政府は「平成29年7月九州北部豪雨災害を踏まえた避難に関する検討会」を設置し、今後の対応等を取りまとめました。

1)地域の防災力
今回の災害では、平成24年の豪雨災害の経験をもとに、住民自らが危険を判断して避難行動をとったことで被害の軽減が図られた面がある一方で、避難場所が居住地近隣になかった、避難を開始しようとしたが避難経路が危険だった等の理由により、避難行動をとることができず、自宅で被災された方もいました。 これを踏まえ、主に次の事項に取り組んでいくこととなりました。

○住民が自ら水害・土砂災害から身を守るための手引書の作成や、住民・行政・専門家等が一体となったワークショップ等による地区防災計画の作成等を推進することにより、自助・共助の取組を促進
○山地部の中小河川などの水害の危険性が高い地域について情報提供を推進
○「危険度分布」等の新たな情報の一層の理解・活用に向け、周知活動などの平時からの取組を促進
○水害・土砂災害時に適切に避難行動がとれるよう、専門家の助言を踏まえるなど地域の実情に応じた防災訓練の実施を促進

2)情報の収集・提供
水害や土砂災害のおそれがある場合、市町村は、水位計・監視カメラからの河川水位等の現地情報や、気象庁が発表する流域雨量指数の予測値(洪水警報の危険度分布)・土砂災害警戒判定メッシュ情報等の防災気象情報など、多くの情報から避難勧告等の発令に資する情報を整理・把握する必要があります。
また、今回の災害では、水位計や監視カメラを設置していたことで避難勧告等の発令に参考となったという自治体があった一方で、現地情報を把握する手段がない河川では発災のおそれを把握することが難しかったという自治体もありました。
これらを踏まえ、主に次の事項に取り組んでいくこととなりました。
○急激に水位が上昇する傾向がある山地部の中小河川についても、市町村による水位情報等の迅速な把握のため、水位計・監視カメラ等の設置の促進
○水位計・監視カメラ等が設置されていない中小河川であっても、水位上昇の見込みを早期に把握するための情報の1つとして、流域雨量指数の予測値(洪水警報の危険度分布)等の活用に関する研修等の実施
○避難勧告等の発令の引き金となる情報の整理、データ伝送路の多重化、円滑な災害対応に向けた近隣の県の気象情報の把握など、今回の災害での情報収集にあたっての教訓を踏まえ、研修等を通じて「避難勧告等に関するガイドライン」を周知

3)避難勧告等の発令・伝達
今回の災害では、一部の河川について、洪水の避難勧告等の発令基準が策定されていなかった、又は定量的な基準となっていなかったことや、避難勧告等を発令したタイミングでは氾濫が発生しており避難行動が困難であったおそれがあった、などの課題がありました。
市町村は、避難勧告等の発令基準について、洪水予報河川や水位周知河川に限らず、氾濫により住民の命に危険を及ぼすおそれがあると判断した場合は中小河川であっても発令基準を策定するとともに、「土砂災害警戒情報の発表をもって直ちに避難勧告を発令する」など、具体的でわかりやすい基準を事前に設定し、時機を逸さずに発令することが必要です。
また、今回の災害では、土砂崩れや落雷・停電に伴う通信障害等により不通となる伝達手段があり、これらの通信手段による情報伝達ができなかった時間帯やエリアがあったほか、ショッピングセンターや旅館等の自宅以外にいる方は、防災行政無線や緊急速報メールといった手段に頼らざるを得ない状況になりました。
これらを踏まえ、主に次の事項に取り組んでいくこととなりました。
○洪水予報河川・水位周知河川以外の河川について、市町村による避難勧告等の発令基準の策定の促進
○市町村による情報伝達手段の多重化・多様化の推進
○今回の災害での避難勧告等の発令・伝達にあたっての教訓を踏まえ、研修等を通じて「避難勧告等に関するガイドライン」を周知

4)防災体制
今回の災害の被災自治体では、災害対策マニュアルや地域防災計画において定めていた防災体制が機能したという声もありましたが、災害対応により混乱が生じたことや、災害対応用の事務室や大型モニター等の設備の不足などの課題も見られました。
これらを踏まえ、主に次の事項に取り組んでいくこととなりました。
○災害対策本部機能等の強化
○今回の災害での防災体制の構築にあたっての教訓等を踏まえ、研修等を通じて「避難勧告等に関するガイドライン」を周知

これを受け、関係省庁は連携し、水害・土砂災害からの防災・減災対策を加速する為の具体的な取組を順次実施しています。