6.搬送方法

二人で搬送する方法の一つに、傷病者の前後を抱えて搬送する方法があります。二人が両側から腕と背中を支えて静かに起こし、ひとりが、背部側から抱え、他の一人は傷病者の下肢を交差させ抱え、二人が同時に持ち上げ、足部側から搬送します。
手を組んで搬送する方法として、傷病者を挟んで向かい合わせに立ち、傷病者を搬送させる方向側の手でヒューマンチェーンを組み傷病者の臀部に当て、背部側から傷病者の両脇に頭を入れ、背部側の手で傷病者の自分と反対側のわきの下を抱え、座らせた状態にして前方に搬送します。
二人で搬送する場合は、傷病者の頸部が前屈するおそれがあるので、気道の確保に注意します。

二人がお互いに歩調を合わせ、搬送に際して傷病者に動揺を与えないように注意します。
一人で搬送する方法として、背部から後方に移動させる方法があります。
傷病者の背部から、わきの下に手を入れ、抱きかかえるようにして起こし両手で傷病者の片方又は両方を把持して臀部をつり上げるようにして移動させます。
背負って搬送する方法は、
傷病者を背負い、膝高から腕を入れて両膝を抱きこみ、傷病者の両腕を交差又は平行にさせて両手を把持して搬送します。
横抱きで搬送する方法として、
乳幼児や小柄な人は横抱きにして搬送します。
毛布、シーツを利用する方法は
毛布やシーツで全身を包み、両肩を浮かすようにして頭部側に引っ張って移動させます。この場合、床面の凹凸や突起物に注意します。
一人で搬送する場合の注意事項は
傷病者の状態、負傷の部位により最も適切な方法を選定し、状況の安定に努めます。
一人で搬送する場合は、傷病者の胸腹部を圧迫することが多いので注意します。
一人による搬送は、やむを得ない場合にとどめ、努めて複数の者による搬送を心がけましょう。
担架が無い場合に、応急的な担架の作成方法として、毛布と物干しざおを使って応急担架を作成する方法があります。

毛布の三分の一程度のところに物干しざお1本を置き、片方の毛布を折り返します。患者の肩幅に合わせて2本目の物干しざおを置き、上の毛布を折り返した後、折り返ししろ15センチ以上確保して、下の毛布を折り返します。
原則として3人1組で搬送します。1名が担架の横につき、けが人の状態に注意します。
けが人の足側を先にして、振動を与えないように、しかも水平になるように静かに運びます。
発進するときは、担架の前を持っている人は左足から、後ろを持っている人は右足を踏み出して揺れを少なくします。
担架を持ち上げる時には、腰を落として持ち上げないと腰を痛めます。
衣服と物干しざおを使って応急担架を作ることもできます。

4~5枚の上着を準備し、上着のボタンをかけたまま、両側から物干し竿に通していきます。中の上着の袖は内側に入れて通すと強度が増します。衣類は、少しずつ重ねて、隙間なく並べます。