平成21年版 消防白書

4 消防活動の充実等

(1)マニュアル、ハンドブック、活動要領等の作成・配布

消防庁では、原災法等により事業者の責務と消防機関の果たすべき任務等がより明確に示されたことを踏まえ、事故等発生時において消防隊員の安全を確保しながら、効果的な消防活動が展開できるよう「原子力施設等における消防活動対策マニュアル」(平成13年3月作成)、このマニュアルを災害現場用にコンパクトにまとめた「原子力施設等における消防活動対策ハンドブック」(平成16年3月作成)、除染活動についてまとめた「原子力施設等における除染等消防活動要領」(平成17年3月作成)等を作成し、消防機関等に配布した。
また、火災等の発生時に消防機関がより安全かつ的確に活動を行うため、平成18年度に消防機関と事業者との連携の現状について調査・検討を行い、「消防機関と原子力事業者等との円滑な連携について」として報告書を取りまとめ、平成19年6月に各都道府県等に配布している。

(2)東電変圧器火災等を受けた新たな措置

平成19年7月の東電変圧器火災の教訓を踏まえて、経済産業省原子力安全・保安院と連携して原子力発電所等の自衛消防体制について検討するとともに、大規模地震時に原子力発電所等において火災等が発生した場合の消防体制を強化するため、平成20年3月に次のような措置を講じている。

ア 消防力の整備指針(平成12年消防庁告示第1号)の一部改正

原子力発電所等の所在する市町村について、消防力の整備指針を改定し、化学消防車の配置基準数を1台増加した。

イ 原子力施設等における消防活動対策マニュアル等の見直し

大規模地震時にも消防活動が迅速かつ的確に実施できるよう、新たに「原子力施設等における消防活動対策マニュアル-地震対策編-」を作成するとともに、消防隊員が災害現場で活用できるよう必要とされる知識、活動要領、留意点等をコンパクトにまとめた「原子力施設等における消防活動対策ハンドブック」の一部改訂も行った。

ウ 実践的な消防訓練のあり方の検討

原子力施設の防火安全体制の充実強化を図るため、平成20年度に原子力施設の自衛消防隊と消防機関との連携によるPDCAサイクルに基づく実践的な消防訓練のあり方について検討を行い、「原子力施設における消防訓練のあり方について」として報告書を取りまとめ、平成21年3月に各都道府県、消防本部等に配布している。
また、平成21年8月、東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所において9件の火災が頻発したことに鑑み、原子力安全・保安院が原子力発電所における火災防止対策を報告書としてとりまとめたが、その際に、消防庁としても積極的に協力を行った。

(3)原子力防災研修

原子力防災研修については、消防大学校において、平成12年(2000年)度から幹部職員を対象に実施していた「放射性物質災害講習会」を、平成16年度は「NBC災害講習会」、平成17年度は「緊急消防援助隊教育科 NBCコース」、平成19年度からは「緊急消防援助隊教育科 NBC・特別高度救助コース」に再編し実施している。

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