平成21年版 消防白書

3 火山災害対策の課題

火山災害に対しては、活動火山対策特別措置法に基づく諸施策を、引き続き推進していくことが重要である。特に、人的被害の発生を防ぐためには、火山観測体制の強化、消防防災用施設・資機材等の整備、実践的な防災訓練の実施、広域的な防災体制の確立等とともに、次のような対策の推進が求められている。

(1)ハザードマップの作成、提供等

火山周辺の地方公共団体においては、火山の特性、地理的条件及び社会的条件を十分勘案して、地域防災計画において火山災害に関する実践的な防災計画を整備するとともに、最新資料の活用により適宜見直しを行う必要がある。また、火山ハザードマップを作成し、地域住民に配布することを通じて、防災情報を積極的に提供することが、平常時から住民に対して、防災意識の高揚を図ることにつながる。
消防庁では、火山周辺の地方公共団体に対してハザードマップの作成を要請するとともに、平常時から住民に対して防災情報を積極的に提供し、防災意識の高揚を図る必要性を示している。

(2)住民への情報伝達体制の整備

噴火警報や、避難勧告、避難指示等の災害情報を確実かつ迅速に住民に伝達するためには、防災行政無線(同報系)の整備が非常に有効である。火山地域の市町村(142団体)における防災行政無線(同報系)の整備率は、80.3%(平成21年3月31日現在)であるが、更なる整備が必要である。

(3)避難体制

火山噴火等により、住民に被害が及ぶおそれがあると判断される場合には、噴火警報の内容や噴火警戒レベルに応じ、人命の安全確保を第一に時間的余裕をもって避難勧告・指示を行う必要がある。また、あらかじめ情報伝達体制、避難についての広報手段、誘導方法、避難所等をきめ細かく定めておくことが必要である。特に、高齢者等の自力避難の困難な災害時要援護者に関しては、事前に避難の援助を行う者を定めておくなど支援体制を整備し、速やかに避難できるよう配慮する必要がある。

(4)関係機関との連携

火山災害時に応急対策を迅速かつ的確に実施するため、火山周辺の地方公共団体においては、火山観測を行っている気象台、砂防部局、火山専門家のほか、警察、消防機関、自衛隊、海上保安庁等との緊密な連携が不可欠であり、地方防災会議等の場を通じて、日ごろから連携を深めておくことが必要である。

(5)観光客対策

観光客、登山者の立入りが多い火山にあっては、火山活動の状況に応じて発表される噴火警報に基づいて、登山規制、立入規制等の措置を速やかにとることができるように、地方公共団体は関係機関と協議しておくことが望まれる。

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