平成21年版 消防白書

第6章 消防防災の科学技術の研究・開発

[研究・開発の推進]

火災等の災害の複雑多様化に伴い、災害の予防・防止、被害の軽減、原因の究明等に関する科学技術の研究開発が果たす役割はますます重要になっているため、第3期科学技術基本計画(平成18年3月28日閣議決定)、科学技術の動向及び社会的ニーズを踏まえて、平成19年2月に改訂した「消防防災科学技術高度化戦略プラン」(平成13年11月策定)により、効率的かつ計画的な研究・開発を推進することとしている。
これらの研究・開発の中心となっている消防研究センターにおいては、その前身となる消防研究所が昭和23年(1948年)に設立されて以来、我が国における消防防災の科学技術に関する国立研究機関として社会的要請及び消防行政上の課題に重点を置いた研究を行っている。消防研究所は、平成13年4月1日、中央省庁等改革の一環として、独立行政法人消防研究所となった。その後、危機管理機能の強化及び行政の効率的実施の観点から、消防庁に統合・吸収する方針が決定(平成16年12月24日閣議決定)され、「独立行政法人消防研究所の解散に関する法律」(平成18年法律第22号)に基づき、平成18年4月1日に廃止され、消防研究センターとしてその業務の一部を引き継いだ。
一方、消防庁においては、消防防災科学技術の振興を図り、安心・安全に暮らせる社会の実現に資する研究を、提案公募の形式により、産学官において研究活動に携わる者等から幅広く募り、優秀な提案に対して研究費を助成する制度である「消防防災科学技術研究推進制度」(競争的研究資金*1制度)を平成15年度に創設するとともに、消防法令の技術基準の整備に直結する研究等を実施している。

*1 競争的研究資金:「資源配分主体が広く研究開発課題等を募り、提案された課題の中から、専門家を含む複数の者による科学的・技術的な観点を中心とした評価に基づいて実施すべき課題を採択し、研究者等に配分する研究開発資金」(第3期科学技術基本計画)のことを指す。

また、消防防災の科学技術に関する研究・開発等については、消防機関の研究部門等においても、消防防災活動や防火安全対策等を実施する上で生じた課題を解決する手段として、積極的に実施されている。

関連リンク

はじめに
はじめに 我が国の消防は、昭和23年に消防組織法が施行され、市町村消防を原則とする自治体消防制度が誕生して以来、関係者の努力の積重ねにより制度、施策、施設等の充実強化が図られ、火災の予防、警防はもとより、救急、救助から地震、風水害等への対応まで広範囲にわたり、日々国民の安全の確保に努めているところで...
1 はじめに
特集 消防と医療の連携の推進 ~消防と医療の連携による救急搬送の円滑化~ 1 はじめに 救急業務は、国民の生命・身体を事故や災害、疾病等から守り、安心・安全な社会を確保するものであり、国民にとって必要不可欠な行政サービスとして定着している。 近年、医療の進歩とともに、傷病の発生初期に実施すると効果的...
2 救急搬送における医療機関の受入状況
2 救急搬送における医療機関の受入状況 全国各地における救急搬送時の受入医療機関の選定困難事案の発生を受けて、消防庁では救急搬送における傷病者の搬送・受入状況を把握するために、「救急搬送における医療機関の受入状況等実態調査」を実施し、平成19年における 〔1〕 重症以上傷病者搬送事...
3 消防法の改正
3 消防法の改正 (1)改正までの経緯 救急搬送における受入医療機関の選定が大変厳しい状況にあることを踏まえ、平成19年から平成20年にかけて「救急業務高度化推進検討会」に「消防機関と医療機関の連携に関する作業部会」を設け、円滑な救急搬送・受入医療体制を確保するための対策について検討が重ねら...