平成22年版 消防白書

7 消防用設備等に係る技術基準の性能規定化

平成16年まで、消防用設備等に係る技術上の基準は、材料・寸法などを仕様書的に規定しているものが多かったため、十分な性能を有する場合であっても、新たな技術を受け入れにくいという面があった。そこで消防庁では、消防防災分野における技術開発を促進するとともに、一層効果的な防火安全対策を構築するために、平成15年6月に消防法を、平成16年2月に消防法施行令を改正し、消防用設備等に係る技術上の基準に性能規定を導入している。
消防用設備等の技術基準に性能規定を導入するに当たっての基本的な考え方は、従来の技術基準に基づき設置されている消防用設備等と同等以上の性能を有するかどうかについて判断し、同等以上の性能を有していると確認できた設備については、それらの消防用設備等に代えて、その設置を認めることとしたものである。
消防用設備等に求められる性能は、火災の拡大を初期に抑制する性能である「初期拡大抑制性能」、火災時に安全に避難することを支援する性能である「避難安全支援性能」、消防隊による活動を支援する性能である「消防活動支援性能」に分けられる。これらについて、一定の知見が得られているものについては、客観的検証法(新たな技術開発や技術的工夫について客観的かつ公正に検証する方法)等により、同等性の評価が行われることとなる。
一方、既定の客観的検証法のみでは同等性の評価ができない設備等(特殊消防用設備等)を対象として、総務大臣による認定制度が設けられている。これは、一般的な審査基準が確立されていない「特殊消防用設備等」について、防火対象物ごとに申請を行い、性能評価機関(日本消防検定協会又は登録検定機関)の評価結果に基づき総務大臣が審査を行って、必要な性能を有するものを設置できることとするものである。平成22年8月1日現在、特殊消防用設備等としてこれまで43件が認定を受けている(第1―1―37表)。

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これらの規定を活用することにより、今後、新技術等を用いた新たな設備等が、積極的に開発・普及されることが期待される。

老朽化消火器の破裂事故を踏まえた安全対策について

老朽化消火器については、その破裂事故に伴う被害等を防止するため、これまで春秋の火災予防運動期間中の一斉回収等が行われてきたところですが、平成21年9月15日、大阪市東成区の屋外駐車場において老朽化した消火器が破裂し、小学生が重傷を負うという事故が発生し、その後も本年2月までの間に各地で4件の破裂事故が発生しました。
これらの事故を契機として、消防庁では、「予防行政のあり方に関する検討会」(座長:平野敏右東京大学名誉教授)において、安全対策に関する検討を行うよう要請しました。本検討会では、老朽化消火器による危害防止の観点から、消火器のライフサイクルに沿って再点検を行うとともに、過去の事故情報を収集・分析し、本年7月、今後講ずべき安全対策に関する報告がとりまとめられました(消防庁ホームページ参照URL:http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/2207/220716_1houdou/01_houdoushiryou.pdf)。
この報告では、腐食が進んだ老朽化消火器の事故防止対策について、メーカーや消防機関からユーザーに対する広報啓発等が行われている中で引き続き事故が発生していることを受けて、よりユーザーの実情に即した対応への転換を図ることが求められました。具体的には、<1>消火器本体の表示を充実、<2>より危害を生じにくい消火器の普及促進、<3>消火器の点検基準の内容の充実、<4>メーカー・販売業者による広報啓発、<5>関係事業者及び消防機関による注意喚起、<6>老朽化消火器の回収の受け皿の確保と住宅や事業所への定着の推進等の対策を講ずべきこととされています(下図参照)。

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消防庁では、この報告を踏まえ、「消火器の技術上の規格を定める省令」の改正等を行うとともに、関係行政機関、事業者団体、メーカー等と連携して、速やかに取組を進めることとしています。

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