8 火災原因調査の現況
科学技術の進歩による産業の高度化に伴い、大規模又は複雑な様相を呈する火災が頻発する傾向にあり、その原因の究明には高度の専門的知識が必要とされている。また、火災原因を一刻も早く明らかにして予防体制及び警戒体制を確立することは、一義的には地方公共団体の役割であるが、それを補完することは国の責務である。これらを踏まえ、平成15年の「消防組織法及び消防法の一部を改正する法律」により、大規模火災等について、消防庁長官の判断により主体的に火災原因調査を行うことができる制度が導入された。
本制度による火災原因調査は、火災種別に応じて消防庁の職員により編成される調査チームが、消防機関と連携して実施するものである。
平成18年度に兵庫県宝塚市で発生したカラオケボックス火災及び平成19年度に東京都渋谷区で発生した温泉施設爆発火災については、消防庁長官による火災原因調査の結果等を踏まえて「予防行政のあり方に関する検討会」を開催し、「予防行政のあり方について(中間報告)」を取りまとめた(平成19年12月)。検討会報告に基づいて防火安全対策の充実を図る事を目的として、「消防法施行令の一部を改正する政令」及び「消防法施行規則の一部を改正する省令」が施行され、警報設備の設置対象が拡大された。
平成20年度においては、平成20年10月1日の大阪市浪速区の個室ビデオ店火災(死傷者25人)について、消防庁長官による火災原因調査の結果等を踏まえ、「予防行政のあり方に関する検討会」を開催し、「予防行政のあり方について(中間報告)~大阪市浪速区個室ビデオ店火災を踏まえた防火安全対策~」を取りまとめた(平成21年6月)。検討会報告に基づいて防火安全対策の充実を図る事を目的として、「消防法施行規則の一部を改正する省令」が施行され、自動火災報知設備や誘導灯に関する設置基準が強化された。また、平成21年3月19日の群馬県渋川市老人ホーム火災(死傷者11名)についても、消防庁長官による火災原因調査の結果等を踏まえ、「小規模施設に対応した防火対策のあり方に関する検討会」を開催し、防火安全対策の検討を行い、危険性の高い社会福祉施設、簡易宿泊所等に対する防火安全教育・指導のための住宅用火災警報器の配備事業の契機となった。そのほか、平成21年度においては、平成22年3月13日の北海道札幌市認知症高齢者グループホーム火災(死傷者9名)について、消防庁長官による火災原因調査を行った(消防庁長官による火災原因調査については、P.265を参照)。