第4節 救急体制
1 救急業務の実施状況
(1)救急出動は6.2秒に1回、国民27人に1人が救急搬送
平成21年中における全国の救急業務の実施状況は、ヘリコプターによる出動件数(3,710件)も含め、512万5,936件(対前年比0.5%増)と、前年と比較して、2万5,566件増加し、平成16年から連続して500万件を超えている。出動件数のうち、救急自動車によるものの上位の事故種別は、急病が314万1,882件、一般負傷が70万3,205件である。
また、救急自動車による搬送人員は468万2,991人(対前年比4,355人増、0.1%増)であり、ヘリコプターによる搬送人員は3,054人である(第2―4―1表、第2―4―2表、附属資料37、38)。


救急自動車による出動件数は、全国で1日平均1万4,033件(前年1万3,965件)で、6.2秒(同6.2秒)に1回の割合で救急隊が出動し、国民の27人に1人(同27人に1人)が救急隊によって搬送されたことになる。
(2)搬送人員の50.8%が入院加療を必要としない傷病者
平成21年中の救急自動車による搬送人員468万2,991人のうち、死亡、重症及び中等症の傷病者の割合は全体の49.2%、入院加療を必要としない軽症傷病者及びその他(医師の診断がないもの等)の割合は50.8%となっている(第2―4―3表)。

(3)搬送人員の49.3%が高齢者(65歳以上)の傷病者
平成21年中の救急自動車による搬送人員468万2,991人の内訳を年齢区分別に見ると、新生児(0.3%)、乳幼児(5.2%)、少年(4.3%)、成人(40.9%)、高齢者(49.3%)となっている(第2―4―4表)。

(4)急病に係る疾病分類項目別搬送人員の状況
平成21年中の急病の救急自動車による搬送人員286万1,613人の内訳をWHOの国際疾病分類(ICD)の項目別にみると、脳疾患(10.8%)、消化器系(10.5%)、心疾患等(9.3%)、呼吸器系(9.8%)となっている(第2―4―1図)。

(5)現場到着まで平均7.9分
平成21年中の救急自動車による出動件数512万2,226件のうち、現場到着時間(119番通報から現場に到着するまでに要した時間)別の救急出動件数の状況は、5~10分未満が333万9,854件で最も多く、全体の65.2%となっている(第2―4―2図)。

また、現場到着時間の平均は7.9分(前年7.7分)となっている。
(6)病院収容まで平均36.1分
平成21年中の救急自動車による搬送人員468万2,991人についての病院収容時間(119番通報から病院に収容するまでに要した時間)別の搬送人員の状況は、30分~60分未満が236万8,945人(全体の50.6%)で最も多く、次いで20分~30分未満の153万3,907人(同32.7%)となっている(第2―4―3図)。

また、病院収容時間の平均は36.1分(前年35.0分)となっている。
(7)搬送人員の97.8%に応急処置等実施
平成21年中の救急自動車による搬送人員468万2,991人のうち、救急隊員が応急処置等を行った傷病者は457万8,159人(搬送人員の97.8%、前年は97.9%)となっており、応急処置等を行った総件数は1,639万8,858件である。
また、平成3年(1991年)以降に拡大された救急隊員による応急処置等(第2―4―5表における※の項目)の総件数は、1,102万9,706件(対前年比2.5%減)となっているが、このうち救急救命士(除細動*1については、救急救命士以外の救急隊員を含む。)が心肺機能停止状態の傷病者の蘇生等のために行う高度な応急処置(ラリンゲアルマスク*2等による気道確保、気管挿管、除細動、静脈路確保*3、薬剤投与*4)の件数は9万7,164件(前年9万2,777件)にのぼり、前年比で約4.7%増となっている。これは救急救命士及び救急科修了者(旧救急標準課程又は旧救急II課程の修了者を含む。以下同じ。)(2(2)、(3)参照)の運用が着実に推進されていることを示している。

*1 除細動:心臓が痙攣したように細かく震えて血液が拍出できない致死性不整脈(心室細動)を電気ショックをかけることにより、その震えを取り除く処置
*2 ラリンゲアルマスク:気道確保に用いられる換気チューブの一つ。喉頭を覆い隠すように接着し、換気路を確保する。
*3 静脈路確保:静脈内に針やチューブを留置して輸液路を確保する処置。静脈路確保により、薬剤を必要時に直ちに静脈内投与することが可能になる。
*4 薬剤投与:医師の具体的な指示の下での、アドレナリン(エピネフリンとも言う。以下単に「アドレナリン」と言う。)の投与