平成22年版 消防白書

2 事業所の自主防災体制

事業所では、自らの施設における災害を予防するための自主防災体制がとられている。特に、平成21年6月に施行された改正消防法では、一定の大規模・高層の建築物について自衛消防組織の設置等が義務付けられたところである。また、一定数量以上の危険物等を取り扱う事業所は、消防法及び石油コンビナート等災害防止法に基づき、防災組織を設置することが義務付けられている。このほか、法令等により義務付けられていない事業所においても、任意に自主防災組織が設置される場合も多い。平成22年4月1日現在、全国の事業所において設置されている自衛消防組織等の防災組織は97万4,115組織となっている(自衛消防組織についてはP.57参照)。
事業所の防災組織は、本来自らの施設を守るために設けられているものであるが、地震などの大規模災害が発生した際に、自主的に地域社会の一員として防災活動に参加・協力できる体制の構築が図られれば、地域防災力の充実強化に大きな効果をもたらすものと考えられる。
阪神・淡路大震災では、事業所の自衛消防隊員が地域の消火活動に出動し、住民と協力して火災の拡大を食い止めたほか、事業所の体育館が避難所として提供された。また、平成17年4月に発生したJR西日本福知山線列車事故においては、周辺の事業所が所有する資機材を活用して被災者の救出救護活動に当たった。
このように、事業所の協力が自然災害や大規模事故、テロ災害等への対応力の強化につながることを踏まえ、全国各地において、地方公共団体と事業所との間で災害時の救出救護や物資提供等に関する協定の締結が行われている。
また、多くの事業所の防災組織が、自主防災組織等の地域の組織と協定を結ぶなどして地域の防災活動に協力している。地域の組織と協力関係を定めている事業所の防災組織は、平成22年4月1日現在で6,494組織となっている。

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