平成22年版 消防白書

[国際協力・国際交流]

1 開発途上諸国等に対する国際協力

(1)アジア国際消防フォーラムの開催

近年アジア諸国では、経済発展・都市化などが進む中、人命・財産や都市インフラ、各種施設等を火災や自然災害から守るべき消防体制を拡充する必要性が高まりつつあり、人命救助や消火、火災予防の技術や体制に関して、我が国消防に対する期待も大きい。このようなことを踏まえ、主としてアジア圏内各国を対象に、対象国の状況に応じて、対象国の消防防災能力の向上に資するため、我が国の消防技術・制度・体制等を当該国で広く紹介する国際消防フォーラムを開催している。また、これを通じて、各国消防防災部局との信頼関係を構築し、不測の災害救援にも備えるものである。
平成22年度で第4回目となるフォーラムは、11月にインドネシア共和国ジャカルタ特別市で開催し、両国における救助隊員の教育、訓練、救助活動等についての議論を行った。

(2)開発途上諸国からの研修員受入れ

消防庁では、JICAと連携・協力し、開発途上諸国の消防防災機関職員を対象に救急救助技術研修、消火技術研修及び火災予防技術研修の3コースの集団研修を、地方消防本部の協力の下で実施している。
救急救助技術研修は昭和62年(1987年)度から、消火技術研修は昭和63年(1988年)度から、火災予防技術研修は平成2年(1990年)度から実施しており、平成22年度は、救急救助技術研修については大阪市消防局において6か国から8人(累計204人)、消火技術研修については北九州市消防局において4か国から8人(累計206人)、火災予防技術研修については東京消防庁において4か国から5人(累計139人)の研修生を受け入れ、2~3か月間に及ぶ研修を実施した。
また、地域別研修として、平成21年度から3か年度の予定でベトナムの消防大学校教官を研修員として迎え、「消火活動指揮技術研修」を実施している。
本研修においては、我が国が現在運用している最新の消防・救助技術について、ベトナムで指導的立場にある職員に研修を実施することにより、我が国の消防・救助技術のベトナムへの移転、さらには、移転される技術のベトナム国内への普及伝播が達成されることを期するものである。2年目となる平成22年度は、5月から約1か月間、東京消防庁、横浜市消防局及び北九州市消防局の指導を得て、特殊災害活動指揮技術の研修を実施した。

消防庁では、上記集団研修・国別研修のほかにも、開発途上諸国からの情報提供、視察等の要望に随時対応している。各国大使館、JICA、財団法人自治体国際化協会等の協力依頼に基づき、各国からの消防防災、気象分野等の関係者の使節を受け入れ、それぞれのニーズに合わせて情報提供等を実施している。

(3)トップマネージャーセミナーの実施

JICAとの連携・協力の下、消防庁では、消防防災分野の国際交流を図ることを目的として、平成10年(1998年)度から、各国消防行政に携わる幹部職員を日本へ招いて意見交換等を行う、トップマネージャーセミナーを実施している。

(4)技術協力プロジェクトへの協力

消防庁では、JICAとの連携・協力により、次の技術協力プロジェクトの内容、実施の枠組みについての検討・助言等に参画している。

タイ王国の防災体制の強化に係る災害対応の枠組み拡充等を目的として実施している。本プロジェクトでは、平成22年度から、対象となる地域をバンコク首都圏の外側まで広げ、地方行政機関の防災体制の強化を図り、中央、地方・コミュニティの連携体制の構築に向けて支援しているところである。

平成20年5月の中国四川省大地震後、中国全土の地震緊急救援を担う中国地震局の研修実施能力強化のため、平成22年度から3年間の予定で本プロジェクトを実施している。
本プロジェクトは、中国の各省政府に属する地震緊急救援隊向け指導者に対する救助技術の強化、災害応急対応担当幹部職員に対する同対応能力強化の2本の柱で構成されている。
本年度は、中国側関係者の訪日研修を実施するとともに、東京消防庁及び政令市消防本部の救助隊員が長期及び短期専門家として中国に滞在し、現地の救助技術の指導にあたっている。また、我が国の災害応急対処に関わる行政官や研究者が短期専門家として現地の訓練センター教官の指導にあたっている。

前掲のように地域別研修として我が国において実施している本研修においては、研修カリキュラムの一環として、毎年度我が国での課程修了後、次年度来日までの間に履修事項のフォローアップ・指導のため短期指導員を派遣している。

関連リンク

はじめに
はじめに はじめに 我が国の消防は、昭和23年に消防組織法が施行され、市町村消防を原則とする自治体消防制度が誕生して以来、関係者の努力の積み重ねにより制度、施策、施設等の充実強化が図られ、火災の予防、警防はもとより、救急、救助から地震、風水害等への対応まで広範囲にわたり、日々国民の安全の確保に努めて...
1 チリ中部沿岸を震源とする地震等の概要
トピックスI チリ中部沿岸を震源とする地震による津波の概要と消防庁の対応 1 チリ中部沿岸を震源とする地震等の概要 平成22年2月27日15時34分(チリ国現地時間同日3時34分)、チリ中部沿岸を震源とするマグニチュード8.8の地震が発生した。この地震により津波が発生し、日本を含む太平洋沿岸諸国の広...
2 我が国への津波の到達及び避難等の状況
2 我が国への津波の到達及び避難等の状況 (1)津波の状況 気象庁は、平成22年2月28日9時33分、青森県太平洋沿岸、岩手県、宮城県に津波警報(大津波)、その他の太平洋沿岸全域などに津波警報(津波)、北海道日本海沿岸南部、オホーツク海沿岸等に津波注意報を発表した。特に津波警報(大津波)の発表は、平...
3 消防庁の対応
3 消防庁の対応 消防庁では、平成22年2月27日にチリ中部沿岸を震源とする地震の発生後、直ちに関係職員が参集し、情報収集体制の確保・強化を図るとともに、翌28日に津波警報(大津波)、津波警報(津波)及び津波注意報の発表後は、全職員が参集し、消防庁長官を本部長とする災害対策本部を設置した。同本部にお...