3 消防財政
(1) 市町村の消防費
ア 消防費の決算状況
市町村の普通会計(公営事業会計以外の会計をいう。)における平成21年度の消防費歳出決算額(東京消防庁を含む。以下同じ。)は1兆8,278億円で、前年度に比べ282億円(1.6%)の増加となっている。
なお、市町村の普通会計歳出決算額52兆1,912億円に占める消防費決算額の割合は3.5%となっている(第2-1-4表)。

イ 1世帯当たり及び住民1人当たりの消防費
平成21年度の1世帯当たりの消防費の全国平均額は3万4,252円であり、住民1人当たりでは1万4,385円となっている(第2-1-4表)。
ウ 経費の性質別内訳
平成21年度消防費決算額1兆8,278億円の性質別内訳は、人件費1兆3,491億円(全体の73.8%)、物件費1,780億円(同9.7%)、普通建設事業費2,280億円(同12.5%)、その他727億円(同4.0%)となっており、およそ4分の3を人件費が占めている。
これを前年度と比較すると、人件費が214億円(1.6%)減少し、物件費が90億円(5.3%)増加し、普通建設事業費が401億円(21.3%)増加している(第2-1-5表)。

(2) 市町村消防費の財源
ア 財源構成
平成21年度の消防費決算額の財源内訳をみると、一般財源等(地方税、地方交付税、地方譲与税等使途が特定されていない財源)が1兆6,638億円(全体の91.0%)、次いで地方債1,069億円(同5.9%)、国庫支出金186億円(同1.0%)となっている(第2-1-6表)。

イ 地方交付税
地方交付税における消防費の基準財政需要額については、市町村における消防費の実情を勘案して算定されており(地方債の元利償還金等、他の費目で算定されているものもある。)、平成23年度は、23年6月に全ての住宅への住宅用火災警報器の設置が義務化されることを踏まえ、住宅用火災警報器の設置促進に要する経費や、高機能消防指令センターの維持管理に要する経費を増額したが、人事委員会勧告等の反映による給与費の見直しを行ったことにより、単位費用は1万1,200円(対前年度比1.8%減)となり、基準財政需要額は1兆6,217億円(同1.5%減)となっている(第2-1-7表)。

ウ 国庫補助金
市町村の消防防災施設等の整備に対する補助金は、国庫補助金と都道府県補助金とがあり、消防庁所管の国庫補助金には消防防災施設整備費補助金(以下「施設補助金」という。)と緊急消防援助隊設備整備費補助金(以下「緊援隊補助金」という。)等がある。
施設補助金は、市町村等の消防防災施設等の整備に対して、原則として補助基準額の3分の1の補助を行っている。なお、国の特別法等において、補助率の嵩上げが規定されているものがある。例えば、地震防災対策特別措置法の地震防災緊急事業五箇年計画に基づき実施される事業のうち、耐震性貯水槽等の施設に対しては2分の1、過疎地域自立促進特別措置法、離島振興法等に基づく整備計画等に掲げる施設に対しては10分の5.5の補助を行っている。
緊援隊補助金については、消防組織法第49条第2項による法律補助として、緊急消防援助隊のための一定の設備の整備に対して補助基準額の2分の1の補助を行っている。
なお、「地域主権戦略大綱」(平成22年6月22日閣議決定)においては、国から地方への「ひも付き補助金」を廃止し、基本的に地方が自由に使える一括交付金にするとの方針の下、現行の補助金、交付金等を改革することとされており、平成23年度予算編成にあたっては、第一段階として投資補助金のうち都道府県分の一括交付金化に取り組むこととなった。施設補助金は、平成23年度から都道府県分が地域自主戦略交付金の対象とされ、内閣府に一括して予算計上されている。
これらの見直しなどの結果、平成23年度予算として施設補助金については概算要求額から都道府県分の地域自主戦略交付金化された額を控除した9.1億円、緊援隊補助金については前年度(47.5億円)比3.1%増の49.0億円、総額で58.1億円(対前年度比25.7%減)を計上した。
施設補助金及び緊援隊補助金のほか、消防庁以外の予算により消防費に関する財源とされる国庫補助金等については、「オ その他」に記載している。
エ 地方債
消防防災施設等の整備のためには多額の経費を必要とするが、国庫補助金や一般財源に加えて重要な役割を果たしているのが地方債である(第2-1-8表)。

このうち、防災対策事業は、地域における「災害等に強い安心安全なまちづくり」を目指し、住民の安心安全の確保と被害の軽減を図るため、防災基盤整備事業及び公共施設等耐震化事業等として実施されているもので、地方債の元利償還金の一部について地方交付税措置が講じられている。なお、防災対策事業の平成23年度地方債計画額は987億円である。
防災基盤整備事業は、消防防災施設整備事業、消防広域化対策事業及び緊急消防援助隊施設整備事業を対象としており、平成18年度からは、消防通信・指令施設として高機能消防指令センターを、平成20年度からは、一定の高規格救急自動車の整備を対象としている。
また、公共施設等耐震化事業は、地域防災計画上、その耐震改修を進める必要のある公共施設及び公用施設の耐震化を対象としている。
このほか、消防防災施設等の整備に係る地方債には、教育・福祉施設等整備事業、一般単独事業(一般事業(消防・防災施設))、辺地対策事業及び過疎対策事業等がある。
オ その他
前記イ~エのほか、特に消防費に関する財源として、入湯税、航空機燃料譲与税、交通安全対策特別交付金、電源立地地域対策交付金、石油貯蔵施設立地対策等交付金、高速自動車国道救急業務実施市町村支弁金、防衛施設周辺民生安定施設整備事業補助金等がある。
(3) 都道府県の防災費
都道府県の防災費の状況をみると、平成21年度における歳出決算額は837億円であり、平成21年度都道府県普通会計歳出決算額に占める割合は0.17%である(第2-1-9表)。その内容は、消防防災ヘリコプター、防災資機材及び防災施設の整備・管理運営費、消防学校費、危険物及び高圧ガス取締り、火災予防、国民保護対策等に要する事務費等である。

(4) 消防庁予算額
ア 平成23年度当初予算
消防庁の平成23年度当初予算額は、元気な日本復活特別枠要望も含めた額として、前年度より2.4%増の131億8,733万円となっている(第2-1-10表)。

このうち、緊急消防援助隊の装備の充実強化、聴覚障がい者対応型の住宅用火災警報器の設置促進、国際消防救助隊の実践的訓練等の実施などの重要政策については、元気な日本復活特別枠の事業として30億7,591万円(対22年度比皆増)となっている。
また、消防庁予算の主要な部分を占める、緊急消防援助隊設備整備費補助金に係る予算額については、行政刷新会議における「事業仕分け第3弾」の評価結果を反映させつつ、前年度より3.1%増の48億9,721万円となっている。
イ 平成23年度補正予算
(i) 補正予算(第1号)
消防庁の平成23年度補正予算(第1号)は平成23年5月2日に成立し、621億5,619万円が計上されたところである。
補正予算(第1号)では、東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所における事故に伴う緊急消防援助隊等の消防機関の活動経費、被災した消防防災施設・設備の復旧や緊急消防援助隊設備の緊急整備など、消防力の迅速な復活・充実強化を図るために必要な予算措置を講じたところである(詳細は、第I部第4章第2節参照)。
(ii) 補正予算(第3号)
消防庁の平成23年度補正予算(第3号)は平成23年11月21日に成立し、338億595万円が計上されたところである。
補正予算(第3号)では、補正予算(第1号)の積み増しとして、消防職団員に対する賞じゅつ金や被災地における消防防災設備の復旧支援、また消防救急無線のデジタル化(緊急消防援助隊機能強化)などの消防防災通信基盤の緊急整備、緊急消防援助隊の機能強化、消防団員の安全対策の推進等を図るために必要な予算措置を講じたところである(詳細は、第I部第4章第2節参照)。