2.火災による死者の状況
(1) 火災による死者の状況
平成23年中の「火災による死者数」は1,766人で、そのうち放火自殺者、放火自殺の巻き添えとなった者及び放火殺人による死者(以下「放火自殺者等」という。)を除いた死者数は1,335人と前年(1,280人)に比べ55人(4.3%)増加しているが、1,546人を記録した平成17年以降おおむね減少傾向となっている。
また、負傷者数は7,286人と前年(7,305人)に比べ19人(0.3%)減少しており、8,850人を記録した平成17年以降減少傾向となっている(第1-1-3図)。

ア 1日当たりの火災による死者数は4.8人
平成23年中の1日当たりの火災による死者数は4.8人となっている(第1-1-2表)。

イ 火災による死者数は、人口10万人当たり1.39人
火災による死者の状況を都道府県別にみると、神奈川県が103人で最も多く、次いで大阪府が100人、愛知県が92人の順となっている。一方、死者が最も少ないのは、島根県で8人、次いで徳島県で11人の順となっている。
これを人口10万人当たりの火災による死者数で比較すると、最も多いのは秋田県で3.10人、最も少ないのは東京都で0.68人となっている。
なお、平成23年中の人口10万人当たりの火災による死者数は、全国平均で1.39人となっている(第1-1-8表)。

ウ 火災による死者は1月から3月及び12月に多く発生
平成23年中の火災による死者発生状況を月別にみると、例年、火気を使用する機会が多い1月から3月まで及び12月に多くなっており、平成23年中も、1月から3月まで及び12月の火災による死者数の平均は月に233人(年間の月平均は147.2人)に上っており、この4か月間に年間の火災による死者数の52.7%に当たる930人の死者が発生している (第1-1-4図、附属資料II-10)。

エ 22時から翌朝6時までの時間帯の火災で多くの死者が発生
平成23年中の火災100件当たりの死者発生状況を時間帯別にみると、22時から翌朝6時までの時間帯で多くなっており、同時間帯の火災100件当たりの死者数の平均は6.7人で、全時間帯の平均3.5人の1.91倍となっている (第1-1-5図、附属資料II-11)。

オ 死因は一酸化炭素中毒・窒息、次いで火傷が多い
平成23年中の火災による死因は、一酸化炭素中毒・窒息が563人(31.9%)と最も多く、次いで火傷が544人(30.8%)となっている(第1-1-9表)。

カ 逃げ遅れによる死者が50.0%
死亡に至った経過をみると、平成23年中の火災による死者数(放火自殺者等を除く。)1,335人のうち、逃げ遅れが668人で50.0%を占めている。その中でも「発見が遅れ、気付いた時は火煙が回り、既に逃げ道がなかったと思われるもの(全く気付かなかった場合を含む。)」が226人と最も多く、全体の16.9%を占めている (第1-1-6図、附属資料II-12)。

キ 高齢者の死者が64.4%
火災による死者数(放火自殺者等を除く。)を年齢別にみると、65歳以上の高齢者が860人(64.4%)を占めており、特に81歳以上が355人(26.6%)となっている (第1-1-7図、附属資料II-13)。

また、人口10万人当たりの死者数(放火自殺者等を除く。)は、年齢が高くなるに従って著しく増加しており、特に81歳以上の階層では、全年齢層における平均1.04人に比べ4.54倍となっている。
ク 放火自殺者等は、火災による死者の総数の24.4%
平成23年中の放火自殺者等は431人となっており、これは、火災による死者の総数(1,766人)の24.4%(前年26.4%)を占めている(第1-1-3図)。

また、これを年齢別・性別にみると、特に男性の61歳~65歳の階層が54人と最も多くなっている (第1-1-8図、附属資料II-13)。

(2) 建物火災による死者の状況
ア 建物火災による死者は、死者総数の75.8%
平成23年中の建物火災による死者数は1,339人で、火災による死者の総数に対する比率は75.8%となっている。
また、建物火災による負傷者は6,194人で、火災による負傷者の総数に対する比率は85.0%となっており、火災による死傷者の多くが建物火災により発生している(第1-1-10表)。

イ 建物火災のうち、全焼による死者は817人
平成23年中の建物火災による死者1,339人について、建物焼損程度別の死者発生状況をみると、全焼の場合が817人で61.0%を占めている (第1-1-9図、附属資料II-15)。

ウ 建物火災による死者の90.4%が住宅で発生
平成23年中の建物火災による死者1,339人について、建物用途別の発生状況をみると、住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅をいう。以下本節において、ことわりのない限り同じ。)での死者は1,210人で、建物火災による死者の90.4%を占めている (第1-1-10図、附属資料II-19)。

また、死因別では一酸化炭素中毒・窒息による死者が542人(40.5%)で最も多く、次いで、火傷による死者が439人(32.8%)となっている (第1-1-11図、附属資料II-16)。

(3) 住宅火災による死者の状況
ア 住宅用火災警報器の普及とともに住宅火災の死者は減少
平成16年の消防法改正により、住宅用火災警報器の設置が、新築住宅については平成18年6月から義務化され、各市町村の条例に基づき、平成23年6月までに全国すべての市町村において義務化された。平成24年6月1日時点での住宅用火災警報器の推計設置率は全国で77.5%となっており、平成23年6月1日時点での推計設置率(71.1%)から6.4ポイント上昇している。
そのような中、平成23年中の住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く。)は1,070人であり、前年(1,022人)と比較し48人の増加(4.7%増)であったものの、1,220人を記録した平成17年と比較すると150人の減少となっている。
一方で、65歳以上の高齢者は711人で、前年に比べ70人(10.9%)の増加となっており、住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く。)の66.4%を占め、4年連続で6割を超えている(第1-1-12図)。

イ 死者発生は高齢者層で著しく高い
平成23年中の住宅火災による年齢階層別の人口10万人当たりの死者発生数(放火自殺者等を除く。)は、年齢が高くなるに従って著しく増加しており、特に81歳以上の階層では、全年齢階層における平均0.84人に比べ4.75倍となっている(第1-1-13図)。

ウ たばこを発火源とした火災による死者が15.0%
平成23年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を発火源別にみると、たばこによるものが160人(15.0%)で最も多く、次いでストーブ125人(11.7%)、電気器具70人(6.5%)の順(不明を除く。)となっている(第1-1-14図)。

エ 寝具類に着火した火災での死者が多い
平成23年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を着火物(発火源から最初に着火した物)別にみると、寝具類に着火した火災による死者が143人(13.4%)で最も多く、次いで衣類81人(7.6%)、ガソリン・灯油類46人(4.3%)の順(不明を除く。)となっている(第1-1-15図)。

オ 22時から翌朝6時までの時間帯で多くの死者が発生
平成23年中の時間帯別の住宅火災の死者(放火自殺者等を除く。)を時間帯別にみると、22時から翌朝6時までの時間帯の平均は110.3人で、全時間帯の平均89.2人の1.24倍となっている (第1-1-16図、附属資料II-17)。

カ 逃げ遅れによる死者が54.0%と最も多い
平成23年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を死に至った経過の発生状況別にみると、逃げ遅れが578人(全体の54.0%)と最も多くなっている(第1-1-17図)。
