[石油コンビナート災害対策の課題]
1.石油コンビナートにおける災害対策の推進
(1) 東日本大震災を踏まえた石油コンビナートの地震・津波対策
東日本大震災により、石油コンビナート等特別防災区域内においても火災等の災害や特定防災施設等に被害が生じたことから、特定事業者における地震・津波対策を推進する必要がある(平成24年度における検討の詳細は、第I部第4章参照)。
(2) 特定事業所における防災体制の充実強化
特別防災区域の特定事業所における火災、漏えい等の事故は、近年200件を超える状況が続いている。また、東日本大震災以降においても、爆発や漏えいにより多数の人的被害や周辺地域への影響を伴う事故が発生している(主な事故事例は次のとおり。)。
平成23年11月13日 東ソー株式会社南陽事業所製造施設爆発火災
塩化ビニルモノマー製造工程の塩酸塔還流槽付近で緊急停止作業中に爆発火災が発生。死者1名。漏えいした二塩化エタンが排水口より流出(一部は海域に流出)。
平成24年4月22日 三井化学株式会社岩国・大竹工場製造施設爆発火災
レゾルシン製造施設の有機過酸化物の酸化工程で、緊急停止作業中に爆発火災が発生。死者1名、負傷者21名が発生。爆発に伴う飛散物や衝撃により事業所外にも多数の物的被害が生じた。
平成24年6月28日 コスモ石油株式会社千葉製油所アスファルト流出事故
長期間休止していたアスファルトタンクにおいて、アスファルトを移送するため加温していたところ、内部に溜まった水が沸騰し、タンクが破損してアスファルトが流出。その一部が近傍の排水口を伝って海上に流出し、オイルフェンスを越えて拡散。
平成24年9月29日 株式会社日本触媒姫路製造所
アクリル酸製造施設のスタートアップ中、精製過程にある残渣混じりのアクリル酸を一時貯蔵するタンクにおいて、異常な温度上昇により爆発火災が発生し、隣接する別のアクリル酸タンクとトルエンタンクに延焼。消防職員1名が殉職、消防職員24名を含め36名が負傷したもの。
このような状況を踏まえ、今後も引き続き特定事業所における事故防止体制と災害応急体制の充実強化に取り組むとともに、特定事業所の防災体制の現状を把握し、適切な指導、助言等を行っていく必要がある。
また、異常現象の通報については、東燃ゼネラル石油株式会社堺工場において消防機関への通報を怠った事案があったことが判明したこと、通報までに時間を要している事案が見られることから、通報の迅速化について特定事業所をはじめとする関係者へ指導や助言を行っていく必要がある。
(3) 大容量泡放射システムの効果的な活用
大容量泡放射システムについては、広域共同防災組織等において同システムを用いた防災訓練が実施されている。同システムの災害時における実効性を高めるために、今後も引き続き、広域共同防災組織等における取扱訓練や放水訓練等の実施及び特定事業者と道府県を中心とした関係防災機関等が一体となった防災訓練の実施を促進するとともに、同システムを広域共同防災組織等で相互活用する場合の協力連携体制の確立が必要である。
また、東日本大震災において、初めて大容量泡放射システムが運用されたが、計画よりも輸送に時間を要したことなど課題があったことから、同システムの有効な活用の方策について検討を行っている。