1.消防法の一部改正
現行制度においては、大規模・高層建築物等で管理権原者が複数となるものについては、共同で防災管理を行うこととしており、各々の管理権原が存する部分ごとに防災管理者を選任して防災管理を実施する一方、建築物全体の防災管理として共同で実施すべき事項については、管理権原者間で協議して定めることを義務付けており、これらの事項を定めた場合には、消防機関に届出を行わなければならないこととしている。また、共同防災管理を実施している建築物等においては、消防法施行規則に基づき、管理権原者間で協議すべき事項の一つとして「統括防災管理者」を定めることとしている。
しかしながら、現行制度では、統括防災管理者の役割や権限が法令上において明確でないことなどから、防災管理を一体的・自律的に行う体制が構築できない等の課題が指摘されていた。
また、東日本大震災において、都市部の高層建築物を中心に激しい揺れに伴う人的・物的被害が発生したことを踏まえ、消防審議会答申において高層建築物等の防火・防災管理体制の強化等についても検討を進めていく必要があるとされた。
これらを踏まえ、消防法の一部を改正する法律案は、第180回国会(常会)に提出され、参議院及び衆議院で可決、成立し、平成24年6月27日に公布された。
改正消防法においては、管理権原者に「統括防災管理者」の選任を義務付け、さらに統括防災管理者に、建築物全体の防災管理に係る消防計画の作成、当該消防計画に基づく建築物全体の避難訓練の実施等の建築物全体の防災管理上必要な業務を行わせるとともに、建築物全体の防災管理を実効性のあるものとするために、統括防災管理者が各防災管理者に対して必要な措置を講ずることを指示することができることとした。