第3章 緊急消防援助隊の効果的な運用・施設整備等
東日本大震災においては、緊急消防援助隊*1の運用において、平成15年の法制化以降初めて消防庁長官が消防組織法第44条第5項の規定に基づき出動の指示を行ったこと、緊急消防援助隊創設以来初めて水上部隊を派遣したこと、最終的には岩手県、宮城県及び福島県の主たる被災3県を除く全国44都道府県から8,854隊30,684人を派遣したこと、活動期間が88日にも及んだことなどにおいて過去に類のない出動事例になった。緊急消防援助隊の懸命の活動は、各被災地において多くの人命を救うとともに、全国各地から多くの部隊が駆けつけることにより、被災地の地域住民に大きな安心感を与えることにもつながり、その活動は高い評価を得た。
*1 緊急消防援助隊は、平成7年(1995年)1月17日の阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、全国の消防機関相互による応援体制を構築するため、全国の消防本部の協力を得て、同年6月に創設された。
大規模災害が発生した場合には、消防庁長官の求め又は指示により、全国から当該災害に対応するための消防部隊が被災地に集中的に出動し、人命救助等の消防活動を実施するものである。
東海地震をはじめとして、東南海・南海地震、首都直下地震等の切迫性やNBCテロ災害等の危険性が指摘されており、全国的な観点から緊急対応体制の充実強化を図るため、消防庁長官に所要の権限を付与することとし、併せて、国の財政措置を規定すること等を内容とする消防組織法の一部を改正する法律が、平成15年に成立し、翌平成16年から施行された。
一方で、今後発生の切迫性が指摘されている東海地震、東南海・南海地震や首都直下地震等の大規模地震への対応を念頭に、全国の消防の総力を最大限引き出すための体制の構築が求められる。
そのため、今回の活動経験等を貴重な教訓として、緊急消防援助隊の活動がより効果的・効率的に行われるよう、長期に及ぶ消防応援活動への対応や消防力の確実かつ迅速な被災地への投入等の課題に対応していく必要がある。

