平成24年版 消防白書

2.関係機関の取組

(1) 消防庁の取組

ア 広域化の検討に対する支援

消防庁では、基本指針の策定と合わせ、都道府県及び市町村における広域化の取組を支援するために、消防庁長官を本部長とする消防広域化推進本部を設置して広域化を推進しているところであり、消防広域化推進アドバイザー*2の派遣や、消防広域化セミナーの開催等を行っている。
平成21年度には、広域化の取組の円滑化や推進策の検討を行うとともに、広域化後の消防防災体制において想定される課題の抽出と対応策の検討を行うため、「消防の広域化を踏まえた消防のあり方検討会」を開催し、報告書を取りまとめた。

*2 消防広域化推進アドバイザー 既に広域化を実現した消防本部の職員や、現在広域化に向けた検討を行っている協議会の職員など、広域化の推進に必要な知識・経験を持つ者の中から、消防庁が選定し登録する。都道府県等の要望に応じて派遣され支援活動を行う。

イ 財政支援

市町村の消防の広域化に伴って必要となる経費に対して、その運営に支障の生じることがないよう、必要な財政措置を講じている。
そのうち、消防署所等の整備については、広域化対象市町村が、消防の広域化に伴って、消防力の整備指針(平成12年消防庁告示第1号)により行わなければならない広域消防運営計画に定められた消防署所等(消防署、出張所、指令センター等)の整備について、事業費の90%に一般単独事業債を充当し、元利償還金の30%に相当する額を、後年度、普通交付税の基準財政需要額に算入することとしている。
また、消防通信・指令施設(高機能消防指令センターで複数の消防本部が共同で整備するもの又は市町村の消防の広域化に伴い整備するものに限る。)については、国の周波数再編に伴うデジタル化関連事業として、事業費の90%に防災対策事業債を充当し、元利償還金の50%に相当する額を、同じく基準財政需要額に算入することとしている(第2-2-5図)。

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(2) 都道府県の取組

ア 推進計画の概要

基本指針では、都道府県は、当該都道府県の区域内において自主的な市町村の消防の広域化を推進する必要があると認める場合には、その市町村を対象として、自主的な市町村の消防の広域化の推進及び広域化後の消防の円滑な運営の確保に関して、推進計画を定めるよう努めなくてはならないこととされており、平成24年4月現在、45の都道府県で推進計画が策定されている。
推進計画に定める市町村の組合せについては、一般論としては、消防本部の規模が大きいほど望ましく、消防力、組織体制、財政規模等を考慮し、管轄人口の観点から言えばおおむね30万以上の規模を一つの目標とすることが適当であるが、管轄面積の広狭、交通事情、島嶼部などの地理的条件等の地域事情もあるため、これらに対する十分な考慮も必要であるとしている。

イ 都道府県の支援策

都道府県によっては、独自の広域化支援方策を講じている例があり、財政支援としては、広域化協議会運営費や広域化に伴う施設整備を対象とした補助制度の創設等が、その他の支援策として、協議会事務局への県職員の派遣や協議会事務局スペースの貸与等が行われている。

(3) 市町村の取組

都道府県の推進計画に定められた広域化対象市町村は、消防の広域化を行う際には、協議により、広域化後の消防の円滑な運営を確保するための広域消防運営計画を作成することとされている(消防組織法第34条第1項)。
広域化に向けた検討を行っている多くの市町村は、市町村部局、消防本部、構成議会議員等から構成される協議会等の検討組織を設置し、〔1〕広域化後の消防の円滑な運営を確保するための基本方針、〔2〕消防本部の位置及び名称、〔3〕市町村の防災に係る関係機関相互間の連携の確保に関する事項のほか、〔4〕構成市町村の負担金割合方式、職員の任用方式や給与の統一方法等、広域消防運営計画や組合規約等の作成に必要な事項を中心に協議を重ねている。

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