第8節 広域消防応援と緊急消防援助隊
1.消防の広域応援体制
(1) 消防の相互応援協定
市町村は、消防に関し必要に応じて相互に応援すべき努力義務があるため(消防組織法第39条第1項)、消防の相互応援に関して協定を締結するなどして、大規模な災害や特殊な災害などに適切に対応できるようにしている。
平成24年4月1日現在、消防相互応援協定の締結状況は、同一都道府県内の市町村間では1,707、異なる都道府県域に含まれる市町村間では579であり、全国の合計は2,286である。
現在、すべての都道府県において、各都道府県下の全市町村及び消防の一部事務組合等が参加した消防相互応援協定(常備化市町村のみを対象とした協定を含む。)が締結されている。
さらに、特殊な協定として、高速道路(名神高速道路消防応援協定ほか)、港湾(東京湾消防相互応援協定ほか)や空港(大阪国際空港消防相互応援協定ほか)などを対象としたものがある 。
(2) 消防広域応援体制の整備
大規模な災害や特殊な災害などに対応するためには、市町村あるいは都道府県の区域を越えて消防力の広域的な運用を図る必要がある。
このため、消防庁では、2に述べる緊急消防援助隊の充実強化を図るとともに、大規模・特殊災害や林野火災等において、空中消火や救助活動、救急活動、情報収集、緊急輸送など消防防災活動全般にわたりヘリコプターの活用が極めて有効であることから、その運用をより効果的に実施するため、「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」を策定して、応援要請の手続の明確化等を図り、消防機関及び都道府県の保有する消防防災ヘリコプターによる広域応援の積極的な活用を推進している(第2-8-1表)。

平成24年1月には、埼玉県秩父市において林野火災が発生し、埼玉県防災航空隊並びに同要綱の規定に基づき栃木県消防防災航空隊及び東京消防庁航空隊が出動し、2日間にもわたって49回もの空中消火を実施した。
気象庁が「これまでに経験したことのないような大雨」と表現して警戒を呼びかけた平成24年7月九州北部豪雨では、熊本県内において、熊本県防災消防航空隊、大分県防災航空隊並びに同要綱の規定に基づき福岡市消防航空隊、長崎県防災航空隊、山口県消防防災航空隊及び愛媛県消防防災航空隊が出動し、情報収集、捜索救助活動等を実施し、16人を救助した。また、再び豪雨に見まわれた2日後には、福岡県内において、福岡市消防航空隊並びに同要綱の規定に基づき宮崎県防災救急航空隊、長崎県防災航空隊、島根県防災航空隊及び京都市消防航空隊が出動し、福岡市消防航空隊を中心として、情報収集や捜索救助等の活動を行い、21人を救助した。
今後とも、消防防災ヘリコプターの広域的かつ機動的な活用を図るため、臨時離着陸場の確保並びに情報収集活動を行うためのヘリコプターテレビ電送システム、可搬型ヘリコプターテレビ受信装置、可搬型衛星地球局の整備等を推進し、全国的な広域航空消防応援体制の一層の充実を図る必要がある。