平成24年版 消防白書

第9節 国と地方公共団体の防災体制

1.国と地方の防災組織等

(1) 防災組織

地震・風水害等の災害から国土並びに国民の生命、身体及び財産を守るため、災害対策基本法は、防災に関する組織として、国に中央防災会議、都道府県及び市町村に地方防災会議を設置することとしている。これら防災会議は、日本赤十字社等関係公共機関の参加も得て、災害予防、災害応急及び災害復旧の各局面に有効適切に対処するため、防災計画の作成とその円滑な実施を推進することを目的としており、中央防災会議においては我が国の防災の基本となる防災基本計画を、各指定行政機関及び指定公共機関においてはその所掌事務又は業務に関する防災業務計画を、地方防災会議においては地域防災計画をそれぞれ作成することとされている。
また、災害に際して応急対策等の推進上必要がある場合には、国は非常災害が発生した場合においては非常災害対策本部、著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合においては、緊急災害対策本部を設置し、都道府県及び市町村は災害対策本部を設置して災害対策を推進することとしている。なお、東日本大震災では、発災直後の平成23年3月11日15時14分、災害対策基本法施行後初めて緊急災害対策本部が設置された。

(2) 災害対策基本法の改正

伊勢湾台風で被害が甚大であったことを踏まえ、昭和36年(1961年)に策定された災害対策基本法は、阪神・淡路大震災を契機として、平成7年(1995年)に、緊急災害対策本部の設置要件の緩和、国民の自発的な防災活動の促進、地方公共団体の広域応援体制の確保など防災対策全般にわたる改正が行われた。それ以降も、平成11年(1999年)には地方分権の推進に関連した改正が、平成23年には地域の自主性及び自立性を高めるための地域防災計画に係る関与の規定の見直しを行う等の改正が行われた。
平成24年6月には、中央防災会議の下に設置された防災対策推進検討会議の中間報告(同年3月)を受けて、東日本大震災から得られた教訓を今後に生かし、災害対策の強化を図るため、防災に関する組織の充実、地方公共団体間の応援に関する措置の拡充、広域にわたる被災住民の受入れ、災害対策に必要な物資等の供給及び運送に関する措置など多岐にわたる改正が行われた。同検討会議最終報告(同年7月)を受けた改正については、現在、政府内で検討が行われている。

(3) 消防庁の防災体制

消防庁は、実動部隊となる消防機関を所管し、地方公共団体から国への情報連絡の窓口になるとともに、地域防災計画の作成、修正など地方公共団体の防災対策に対する助言等を行っているが、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、地方公共団体の防災対策全般の見直しを推進し、支援措置の充実を図っている。
平成7年(1995年)に発足した全国の消防機関相互による援助体制である緊急消防援助隊については、平成15年に消防庁長官が出動に必要な措置を指示することができるようにするなど制度が法制化され、また、平成20年には、緊急消防援助隊の機動力の強化等を内容とする法改正が行われている。
消防庁内部の平常時の組織体制についても、平成17年に大規模地震対策、消防防災の情報通信システム、緊急消防援助隊、救助・テロ対策、国民保護の企画・運用等の緊急対応や地方公共団体との連絡調整等の各業務を統括する「国民保護・防災部」を設置し、より一層の業務の専門性の確立及び責任体制の明確化を図っている。東日本大震災におけるかつてない規模の緊急消防援助隊の活動経験を踏まえ、今後発生が予想される南海トラフ巨大地震や首都直下地震等大規模災害への対応に備えるために、平成24年4月に緊急消防援助隊や航空機による消防に関する制度の企画及び立案等に関する業務をつかさどる「広域応援室」を、当該業務体制を拡充する形で部内に新設した。
また、設備・装備の整備として、緊急消防援助隊等のオペレーションや、大規模災害等発生時の迅速かつ的確な初動対応の実施のため、総務省(中央合同庁舎第2号館)内に「消防防災・危機管理センター」を整備するとともに発災時の職員の自動参集システムを構築したほか、消防庁職員等を被災地へ迅速に派遣し、併せて、現地調査、情報収集を行うことにより、消防庁長官による緊急消防援助隊の出動指示や現地における的確な災害対応等を迅速かつ適切に実施するための消防庁ヘリコプターを導入している。
これらにより、災害に対し、より迅速かつ的確な対処を可能としているところであり、東日本大震災では、東北地方太平洋沖地震発生(平成23年3月11日14時46分)と同時に消防庁災害対策本部を設置し、情報収集等に当たるとともに、同日15時40分には20都道府県に対し、緊急消防援助隊の出動を指示した。

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