平成24年版 消防白書

2.地域防災計画

(1) 地域防災計画の修正

地域における防災の総合的な計画である地域防災計画については、全ての都道府県と市町村で作成されている。内容的にも、一般の防災計画と区別して特定の災害ごとに作成する団体が増加しており、平成24年4月1日現在、都道府県においては、震災対策は47団体、原子力災害対策は26団体、風水害対策は34団体、火山災害対策は17団体、林野火災対策は19団体、雪害対策は13団体が作成している。
地域防災計画については、災害対策基本法において、毎年検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならないこととされている。
消防庁では、東日本大震災を踏まえ、平成23年5月に消防庁長官通知「地域防災計画等に基づく防災体制の緊急点検の実施について」を発出し、被害想定、避難対策、災害応急対策、災害予防等に関して、緊急点検を要請した。
同年12月には、「津波災害対策編」を新設することなどを内容とする防災基本計画が修正されたのに合わせて、地域防災計画の見直しを行う際に参考となる留意点や参考事例を取りまとめた「地域防災計画における地震・津波対策の充実・強化に関する検討会報告書」を作成し、地方公共団体に通知した。 また、平成24年2月には、消防庁防災業務計画を修正するとともに、地方公共団体に対して、自然的、社会的条件等を十分に勘案し、具体的かつ実践的なものとすること、マニュアル等の充実、実践的な防災訓練の実施等により、その実効性の向上に努めること、災害に関する経験と対策の積み重ね等により随時見直しに取り組むこと等に留意して地域防災計画の見直しを行うよう要請した。
なお、平成23年度中において、都道府県30団体、市町村468団体が、地域防災計画の修正を行っている。

(2) 広域防災応援体制

ア 広域防災応援体制の確立

地方公共団体間等の広域防災応援に係る制度としては、消防組織法に基づく消防相互応援のほか、災害対策基本法に基づく地方公共団体の長等相互間の応援、地方防災会議の協議会の設置等がある。また、災害対策基本法においては、地方公共団体は相互応援に関する協定の締結に努めなければならないとされている。
一方、地方公共団体と国の機関等との間の広域防災応援に係る制度としては、災害対策基本法に基づく指定行政機関から地方公共団体に対する職員の派遣、自衛隊法に基づく都道府県知事等から防衛大臣等に対する部隊等の派遣の要請がある。自衛隊の災害派遣についてはこのほか、災害対策基本法に基づき市町村長が都道府県知事に対し、上記の要請をするよう求めることができる。さらに市町村長は、知事に対する要求ができない場合には、防衛大臣等に対して災害の状況等を通知することができる。
なお、平成24年に災害対策基本法が改正され、同法に基づき地方公共団体間で応援を求めることができる業務の範囲が、従来の応急措置から避難所運営支援、巡回健康相談、施設の修繕など応援対策業務全体に拡大されるとともに、応援等が円滑に行われ、又は、受けることができるよう、あらかじめ備えておくことや市町村の区域を越えた避難(広域一時滞在)に係る規定等が整備された。

イ 広域防災応援協定の締結

災害発生時において、広域防災応援を迅速かつ的確に実施するためには、関係機関とあらかじめ協議し協定を締結することなどにより、応援要請の手続、情報連絡体制、指揮体制等について具体的に定めておく必要がある。
都道府県間の広域防災応援については、阪神・淡路大震災以降、各都道府県で広域防災応援協定の締結又は既存協定の見直しが進められた。また、個別に締結している災害時の相互応援協定では対策が十分に実施できない大規模災害に備え、全国知事会で、全都道府県による応援協定が締結され、全国レベルの広域防災応援体制が整備された。東日本大震災においても、それに基づいた応援が実施されたが、東日本大震災での経験を踏まえ、全国知事会の応援協定の見直しが、平成24年5月になされた。
また、市町村でも、県内の統一応援協定や県境を超えた広域的な協定の締結など広域防災応援協定に積極的に取り組む傾向にあり、平成24年4月1日現在、広域防災応援協定を有する市町村数は1,645団体(全体94.4%)であり、このうち、他の都道府県の市町村と協定を有する市町村数は959団体(58.3%)となっている。
東日本大震災においては、市町村間の応援協定に基づく応援のほか、全国知事会の応援協定、指定都市市長会や中核市市長会による応援協定、総務省及び全国市長会・全国町村会の調整による応援などが実施された。
引き続き、広域防災拠点の整備や広域応援にも対応した物資・資機材等の備蓄を促進するとともに、応援の受入れ体制の整備や広域応援を含む防災訓練の実施、市町村の区域を越えた避難への備えを進めること等により、実効ある広域応援体制の整備を図っていく必要がある。

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