平成24年版 消防白書

4.防災体制の整備の課題

(1) 地方防災会議の一層の活用

地方防災会議は、防災関係機関が行う防災活動の総合調整機関であり、近年は、その中に震災対策部会、原子力防災部会等の専門部会が設けられ、機能の強化が図られている。
今後は、その更なる活用等により専門性等を兼ね備えた防災計画の策定に努めるとともに、平常時の活動に加えて、災害時においても防災関係機関相互の連携のとれた円滑な防災対策を推進する必要がある。
また、平成24年の災害対策基本法の改正により、女性、高齢者、障害者などの多様な主体の視点が反映されるよう、都道府県防災会議の委員として、自主防災組織を構成する者又は学識経験のある者のうちから都道府県知事が任命する者が新たに加えられた(市町村の防災会議については、都道府県の防災会議に準ずることとされている。)ところであり、法改正の趣旨を踏まえた災害対策の推進を図っていく必要がある。

(2) 地域防災計画の見直しの推進

地域防災計画については、各地方公共団体の自然的、社会的条件等を十分勘案し、地域の実情に即したものとするとともに、具体的かつ実践的な計画となるよう適宜見直しに取り組むことが求められる。
具体的には、地域防災計画の見直しに当たっては、被害想定、職員の動員配備体制、情報の収集・伝達体制、応援・受援体制(被災者の受入れを含む。)、被災者の収容・物資等の調達、防災に配慮した地域づくりの推進、消防団・自主防災組織の充実強化、災害ボランティアの活動環境の整備、災害時要援護者対策、防災訓練などの項目に留意する必要がある。
防災基本計画等が修正された場合や訓練等により計画の不十分な点が発見された場合及び災害の発生により防災体制及び対策の見直しが必要とされた場合など、その内容に応じて速やかな見直しを行う必要がある。また、前述のように女性、高齢者、障害者などの多様な主体の視点が反映されるよう留意する必要がある。

(3) 実効ある防災体制の確保

地域防災計画は、より具体的で内容が充実し、防災に資する施設・設備についてもより高度かつ多様なものが導入されてきているが、災害発生時に、これらが実際に機能し、又は定められたとおりに実施できるかが重要である。また、災害は多種多様で予想できない展開を示すものであり、適切で弾力的な対応を行うことが必要である。
そのため、組織に関しては、危機管理監等の専門スタッフが首長等を補佐し、自然災害のみならず各種の緊急事態発生時も含め地方公共団体の初動体制を指揮し、平時においては関係部局の調整を図る体制が望ましいと考えられる。平成24年4月1日現在、すべての都道府県において部次長職以上の防災・危機管理専門職が設けられている。

(4) 避難勧告等の判断・伝達マニュアル策定及び災害時要援護者の避難対策の推進

ア 避難勧告等の判断・伝達マニュアル策定の推進

避難勧告等の適切な発令の促進のため、「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」(平成17年3月)が取りまとめられている。ガイドラインでは、避難すべき区域・避難勧告等の発令の判断基準を含めたマニュアル策定の進め方や、避難勧告等の伝達手段の整備・伝達内容について注意すべき事項を明記している。
各市町村においては、このガイドラインを参考にマニュアルの策定及び必要な点検・見直し等を行うことが重要であり、各都道府県においては、それらの取組を積極的に支援していくことが望まれる。

イ 災害時要援護者の避難対策の推進

高齢者等の災害時要援護者の避難支援などについては、「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」が平成17年3月に取りまとめられ、平成18年3月の改訂を経て、現在に至っている。ガイドラインでは、情報伝達体制の整備、災害時要援護者情報の共有、避難支援計画の具体化について注意すべき事項を明記している。
各市町村においては、防災部局と福祉部局が連携し、このガイドラインを参考に災害時要援護者の避難支援の取組方針等(全体計画、災害時要援護者名簿、個別計画)を策定することが求められており、各都道府県においては、それらの取組を積極的に支援していくことが望まれる。

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