平成26年版 消防白書

2.消防防災設備・施設等

(1) 消防車両等の整備

消防本部及び消防署においては、消防活動に必要となる消防ポンプ自動車、はしご自動車(屈折はしご自動車を含む。)、化学消防車、救急自動車、救助工作車、消防防災ヘリコプター等が整備されている。
また、消防団においては、消防ポンプ自動車、小型動力ポンプ付積載車、救助資機材搭載型車両等が整備されている(第2-1-2表)。

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(2) 消防隊員用個人防火装備

消防庁では、消火活動時における消防隊員の安全性の向上のため、平成22年度に「消防隊員用個人防火装備のあり方に関する検討会」を開催し、消防隊員用個人防火装備(以下「個人防火装備」という。)に求められる性能等について検討を行い、平成23年5月に「消防隊員用個人防火装備に係るガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)を策定している。
ガイドラインは、火災発生建物へ屋内進入する可能性のある消防吏員の防火服、防火手袋、防火靴及び防火帽を対象に、耐炎性、耐熱性等の熱防護性や、快適性、運動性等の機能について、消火活動を実施する上で安全上必要と思われる一定の性能及びその試験方法を定めたほか、安全な着装方法などの基本事項及びメンテナンスなど取扱い上の注意事項を明記している。
各消防本部においては、地域特性や消防戦術等を考慮し、ガイドラインを参考としながら、個人防火装備の仕様について検討を行い、消防隊員は、個人防火装備の持つ性能等を教育訓練で理解した上で、十分な安全管理体制のもと、消火活動を実施することが必要とされている。
なお、防火服等の消防隊員用個人防護装備に関する国際規格については、ISO(国際標準化機構)の人体安全の防護衣及び装置に関する専門委員会及びその下部組織である分科委員会(ISO/TC94/SC14)において、建物火災用個人防護装備(防火服、防火手袋、防火靴及び防火帽)の新たな国際規格の作成に向けた審議がされており、これに対して、日本国内では消防庁も委員として参加しているSC14国内対策委員会において審議が行われている。

(3) 消防通信施設

火災等の被害を最小限に抑えるためには、火災等を早期に覚知し、消防機関が素早く現場に到着するとともに、現場においては、情報の収集及び指揮命令の伝達を迅速かつ的確に行うことが重要である。この面で消防通信施設の果たす役割は大きい。消防通信施設には、火災報知専用電話、消防通信網等がある。

ア 119番通報

火災報知専用電話は、通報者等が行う火災や救急等に関する緊急通報を消防機関が受信するための専用電話をいう。
なお、電気通信番号規則において、消防機関への緊急通報に関する電気通信番号は「119」と定められている(P. 221「第2-10-2図 消防防災通信ネットワークの概要」参照)。
平成25年中の119番通報件数は、865万6,476件となっており、その通報内容別の内訳は、救急・救助に関する通報件数が全体の64.9%を占めている(第2-1-3図)。

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近年の携帯電話・IP電話*1等(以下「携帯電話等」という。)の普及に伴い、携帯電話等による119番通報の件数が増加し、通報総数に占める割合は、それぞれ35.9%、20.9%となっている(第2-1-4図)。

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*1 IP(Internet Protocol)電話:電話通信ネットワークと電話端末との接続点においてIP技術を利用して提供する音声電話サービス

119番通報を受信する消防機関では、通報者とのやり取りの中で、災害地点や災害情報の聞き取りを行っているが、高機能消防指令センターを導入する消防機関では119番通報によってモニター上の地図に通報場所などの位置情報を表示することが可能となっている。特に、携帯電話からの119番通報については、発信者が周辺の地理に不案内な場合も多い等の課題があったが、平成19年4月から、携帯電話等からの119番通報時に発信場所の位置情報が各消防機関に通知されるシステム(以下「位置情報通知システム」という。)の運用が始まった。
さらに、全国の消防機関の財政負担の軽減を図るため、消防庁では、この位置情報通知システムと従来の固定電話からの新発信地表示システム*2との統合について検討を進めてきたが、平成21年3月に取りまとめた「新発信地表示システムと位置情報通知システムの統合あり方に関する検討会」の報告を受け、平成21年10月から統合型位置情報通知システムの運用を開始した。

*2 新発信地表示システム:東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社の固定電話から119番通報に係る発信者の位置情報(住所情報)を消防本部に通知するシステム

これにより、平成26年4月1日現在、「位置情報通知システム」や「統合型位置情報通知システム」により、携帯電話等からの119番通報時に位置情報を把握できる消防本部数は、600本部(うち統合型位置情報通知システム362本部)となっている。

イ 消防通信網等

消防救急無線は、消防本部から災害現場で活動する消防隊、救急隊等に対する指示を行う場合、あるいは、火災現場における命令伝達及び情報収集を行う場合に必要とされる重要な設備である(第2-1-5図)。また、消防電話は、消防本部、消防署及び出張所相互間において、通報を受けた場合に同時伝達、指令等の連絡に使われる専用電話である(第2-1-5図)。

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一方、消防防災ヘリコプターに搭載されたカメラ等で撮影された映像情報は、衛星通信ネットワークを活用して、全国や地域で利用されている。

(4) 消防水利

消防水利は、消防活動を行う上で消防車両等とともに不可欠なものであり、一般的には、消火栓、防火水槽等の人工水利と河川、池、海、湖等の自然水利とに分類される。
人工水利は、火災発生場所の近くで常に一定の取水が可能であることから、消防活動時に消防水利として活用される頻度が高いものである。特に阪神・淡路大震災以降は、大規模地震に対する消防水利対策として、耐震性を備えた防火水槽等の整備が積極的に進められている(第2-1-3表)。

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また、自然水利は、取水量に制限がなく長時間に渡る取水が可能な場合が多いため、人工水利とともに消防水利として重要な役割を担っている。その反面、季節により使用できない場合や、取水場所などに制限を受ける場合もあるため、消防水利の整備に当たっては、人工水利と自然水利を適切に組み合わせて配置することが求められる。

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