平成26年版 消防白書

1.消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律の成立

(1) 消防団の現状と課題

消防団は、市町村の非常備の消防機関であり、その構成員である消防団員は、他に本業を持ちながらも「自らの地域は自らで守る」という郷土愛護の精神に基づき参加し、消防・防災活動を行っており、地域の安全確保のために果たす役割は極めて大きい。
東日本大震災をはじめ、全国各地で地震や風水害等の大規模災害が発生した際には、多くの消防団員が出動している。消防団員は、災害防御活動や住民の避難支援、被災者の救出・救助などの活動を行い、大きな成果を上げており、地域住民からも高い期待が寄せられている。
また、南海トラフ地震や首都直下地震などの大規模地震の発生が懸念されており、消防団を中核とした地域の総合的な防災力の向上が求められている。さらに、「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成16年法律第112号)」においては、消防団は避難住民の誘導などの役割を担うこととされている。
このように、消防団は地域における消防防災体制の中核的存在として、地域住民の安心・安全の確保のために果たす役割はますます大きくなっているが、全国の多くの消防団では、社会環境の変化を受けて様々な課題を抱えている。

ア 消防団員数の減少

消防庁では、平成15年12月の消防審議会答申を踏まえ、消防団員数を全国で100万人以上(うち女性消防団員数10万人以上)確保することを目標としており、消防団員確保の全国的な運動を展開してきたが、消防団員数は年々減少しており、平成26年4月1日現在、10年前の平成16年4月1日現在の91万9,105人に比べ5万4,758人、6.0%減少し、86万4,347人となっていることから、消防団員の減少に歯止めをかけ、増加させる必要がある(特集2-1図)。

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イ 消防団員の被雇用者化

消防団員に占める被雇用者団員の割合は、平成26年4月1日現在、10年前の平成16年4月1日現在の69.8%に比べ2.4ポイント増加し、72.2%となっており、消防団員の被雇用者の割合が高い水準で推移していることから、事業所の消防団活動への協力と理解を求めていく必要がある(特集2-1図)。

ウ 消防団員の平均年齢の上昇

消防団員の平均年齢は、平成26年4月1日現在、10年前の平成16年4月1日現在の37.4歳に比べ2.5歳上昇し、39.9歳となっており、毎年少しずつではあるが、消防団員の平均年齢の上昇が進んでいることから、若者や大学生・専門学校生の入団促進を図っていく必要がある(特集2-2図)。

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エ 女性の採用

女性消防団員数は、平成26年4月1日現在、10年前の平成16年4月1日現在の1万3,148人に比べ8,536人、64.9%増えて、2万1,684人となっており、消防団員総数が減少する中、その数は年々増加している(特集2-3図)。

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しかしながら、女性消防団員がいる消防団は全消防団の61.6%にとどまっている。近年、火災予防の啓発や応急手当指導等の女性消防団員の役割はますます高まってきており、平成26年8月豪雨による広島市土砂災害においても、広島市の女性消防団員が避難所の運営支援活動等に従事し、高い評価を受けた。女性消防団員がいない消防団では今後、入団に向けた積極的な取組が必要である。

(2) 消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律の成立

平成25年12月、議員立法により「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律」(平成25年法律第110号)(以下「消防団等充実強化法」という。)が成立した。この法律は、東日本大震災をはじめ、地震、局地的な豪雨等による災害が頻発し、住民の生命、身体及び財産の災害からの保護における地域防災力の重要性が増大している一方、少子高齢化の進展、被用者の増加、地方公共団体の区域を越えて通勤等を行う住民の増加等の社会経済情勢の変化により地域における防災活動の担い手を十分に確保することが困難となっていることにかんがみ、消防団を中核とした地域防災力の充実強化を図り、住民の安全に資するために制定された。
この法律においては、〔1〕地域防災力の充実強化に関する計画の策定、〔2〕全ての市町村に置かれるようになり、将来にわたり地域防災力の中核として欠くことのできない代替性のない存在である消防団の強化、〔3〕国及び地方公共団体による消防団への加入の促進、〔4〕公務員の兼職の特例、〔5〕事業者・大学等の協力、〔6〕消防団員の処遇・装備・教育訓練の改善等の消防団の活動の充実強化、〔7〕地域における防災体制の強化について規定されている(特集2-4図)。

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