平成27年版 消防白書

2.引き続き実施すべき消防団の充実強化施策

(1) 消防団の現状

これまで、通常の火災出動に加え、全国各地で地震や風水害等の大規模災害が発生した際には、多くの消防団員が出動してきた。消防団員は、災害防御活動や住民の避難支援、被災者の救出・救助などの活動を行い、大きな成果を上げており、地域住民からも高い期待が寄せられている。
また、今後、南海トラフ地震や首都直下地震などの大規模地震の発生が懸念されており、消防団を中核とした地域の総合的な防災力の向上が求められている。さらに、「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」(平成16年法律第112号)においては、消防団は避難住民の誘導などの役割を担うこととされている。
このように、消防団は地域における消防防災体制の中核的存在として、地域住民の安心・安全の確保のために果たす役割はますます大きくなっているが、全国の多くの消防団では、社会環境の変化を受けて様々な課題を抱えている。

ア 消防団員数の減少

消防庁では、平成15年12月の消防審議会答申を踏まえ、消防団員数を全国で100万人以上(うち女性消防団員数10万人以上)確保することを目標としており、様々な消防団員確保の全国的な運動を展開してきたが、消防団員数は年々減少しており、平成27年4月1日現在、10年前の平成17年4月1日現在の90万8,043人に比べ4万8,048人、5.3%減少し、85万9,995人となっていることから、消防団員の減少に歯止めをかけ、増加させる必要がある(特集2-8図)。

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イ 消防団員の被雇用者化

消防団員に占める被雇用者団員の割合は、平成27年4月1日現在、10年前の平成17年4月1日現在の69.8%に比べ2.6ポイント増加し、72.4%となっており、消防団員の被雇用者の割合が高い水準で推移していることから、事業所の消防団活動への協力と理解を求めていく必要がある(特集2-8図)。

ウ 消防団員の平均年齢の上昇

消防団員の平均年齢は、平成27年4月1日現在、10年前の平成17年4月1日現在の37.6歳に比べ2.6歳上昇し、40.2歳となっており、毎年少しずつではあるが、消防団員の平均年齢の上昇が進んでいることから、大学生・専門学校生等若い世代の入団促進を図っていく必要がある(特集2-9図)。

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エ 女性の採用

女性消防団員数は、平成27年4月1日現在、10年前の平成17年4月1日現在の1万3,864人に比べ8,883人、64.1%増えて、2万2,747人となっており、消防団員の総数が減少する中、その数は年々増加している(トピックス1-4図 P.30参照)。しかしながら、女性消防団員がいる消防団は全消防団の64.3%にとどまっている。
近年、地域の安心・安全の確保に対する住民の関心の高まりなどを背景に消防団活動も多様化しており、実災害での消火活動や後方支援活動などはもちろん、住宅用火災警報器の設置促進、火災予防の普及啓発、住民に対する防災教育及び応急手当指導等、女性消防団員の活躍が多岐にわたって期待されている。
平成26年8月豪雨による広島市土砂災害においても、広島市の女性消防団員が避難所の運営支援活動等に従事し、高い評価を受けた。女性消防団員のいない消防団では、入団に向けた積極的な取組が必要である。

(2) 全国消防団員意見発表会・消防団等地域活動表彰の実施

地域における活動を推進するとともに、若手・中堅消防団員や女性消防団員の士気の高揚を図るため、全国各地で活躍する若手・中堅消防団員や女性消防団員による意見発表会を開催し、併せて、

  • 地域に密着した模範となる活動を行っている消防団
  • 消防団員の確保について特に力を入れている消防団
  • 大規模災害時等において顕著な活動を行った消防団

に対する表彰などを実施し、その取組内容を取りまとめ、全国に発信している。

(3) 消防団員入団促進キャンペーンの全国展開

消防団員の退団が毎年3月末から4月にかけて多い状況を踏まえ、退団に伴う消防団員の確保の必要性があることから、毎年1月から3月までを「消防団員入団促進キャンペーン」期間として位置付け、消防団員募集ポスターやリーフレットの作成・配布を行い、消防団員募集についての積極的な広報の全国的な展開を図っている。

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(4) 消防団活動のPR

ア 「消防団のホームページ」の運用

消防庁における最新施策や最新情報等を掲載し、消防団活動のPRに努めている。
(URL:http://www.fdma.go.jp/syobodan/

イ 雑誌広告等の広報媒体の活用

特に女性や若者をターゲットとした雑誌広告等の広報媒体を活用し、消防団活動への理解及び入団促進の広報に努めている。

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(5) 機能別団員及び機能別分団など消防団組織・制度の多様化方策の導入

すべての災害・訓練に出動する消防団員(以下「基本団員」という。)を基本とする現在の制度を維持した上で、必要な消防団員の確保に苦慮している各市町村が実態に応じて選択できる制度として、次の多様化方策を講じている(特集2-10図)。

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ア 機能別団員(特定の活動、役割のみに参加する団員)制度

入団時に決めた特定の活動・役割及び大規模災害対応等に参加する制度である。


イ 機能別分団(特定の活動、役割を実施する分団)制度

特定の役割、活動を実施する分団・部を設置し、所属団員は当該活動及び大規模災害対応等を実施する制度である。

ウ 休団制度

消防団員が出張、育児等で長期間にわたり、活動することができない場合、消防団員の身分を保持したまま一定期間の活動休止を消防団長が承認する制度である。休団中の大規模災害対応、休団期間の上限は各消防団で規定し、休団中は報酬の不支給、退職報償金の在職年数不算入が可能である。

エ 多彩な人材を採用・活用できる制度

条例上の採用要件として年齢・居住地等を制限している場合は、条例を見直すことにより幅広い層の人材が入団できる環境の整備を図り、また、年間を通じて募集・採用を実施することが必要である。

(6) 消防団員確保の支援体制の構築

消防団員の減少に歯止めをかけるために、消防団員確保に必要な知識又は経験を有する消防職団員等を地方公共団体に派遣し、消防団員の確保のための具体的な助言や情報提供等を行う「消防団員確保アドバイザー派遣制度」を平成19年4月から実施しており、平成27年11月現在、31人のアドバイザー(うち女性10人)が全国で活躍している。

(7) 「消防団を中核とした地域防災力充実強化大会」の開催

地域防災力は、消防団をはじめ、住民、自主防災組織、女性(婦人)防火クラブ、少年消防クラブ等の多様な主体が適切に役割分担をしながら相互に連携協力することによって確保されるものであり、官民を挙げてその充実強化を図る必要がある。
このため、消防団等充実強化法の成立や第27次消防審議会の中間答申等を踏まえ、各界各層の幅広い参加を得て、平成27年11月30日に広島県で「消防団を中核とした地域防災力充実強化大会」を開催した。
今後は、平成28年1月29日に茨城県で大会を開催する予定であり、こうした取組が各地域で展開されるよう、引き続き地域防災力の充実強化への機運を醸成していく。

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