平成27年版 消防白書

3.熱中症予防の取組

(1) 消防機関の取組

熱中症の予防には、熱中症による救急搬送人員数調査結果の公表を通じた全国的な普及啓発に加え、各地域において関係者が連携し、対象者の属性を踏まえつつ、継続的に普及啓発活動を展開することが重要である。政府では熱中症による救急搬送人員数が急増する7月を「熱中症予防強化月間」としており、消防庁においては、平成27年は6月22日に「熱中症対策リーフレット」(トピックス3-7図)を全国の消防機関に配布し、各種イベント、自主防災訓練、応急手当講習等の機会に活用するよう呼びかけている。また、ツイッター(トピックス3-8図)やホームページ上できめ細かな情報発信を行うほか、気温が急激に上昇する時期や猛暑日が続く時期等に各地方公共団体に対し通知を発出し、地域の実情に応じて、応急手当講習などのあらゆる機会を通じて積極的に熱中症予防対策を周知するよう促している。(参照URL:http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/fieldList9_2.html)。

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また、平成26年度に開催された救急業務のあり方に関する検討会において、全国の消防本部の取組を調査したところ、予防救急の取組を行っている消防本部は全国751消防本部のうち538本部(71.6%)であり、そのうち、507本部で熱中症に関する予防救急の取組を行っていた。今後とも消防庁では先進事例の紹介等を行うことにより、各消防本部において効果的な熱中症予防対策が実施されるよう支援していくこととしている。

(2) 関係省庁との連携

熱中症の予防と応急対策に係る知識の普及、関連情報の周知、地域の実情に応じた対策を推進するため、平成19年から環境省、厚生労働省、気象庁等からなる熱中症関係省庁連絡会議が開催されている。消防庁は当該会議に参画し、熱中症対策の効率的かつ効果的な実施方策の検討及び情報交換を行っている。また、近年、熱中症対策について環境省が暑さ指数(WBGT)*1の活用を推奨していることから、消防庁ツイッターを通じてWBGTについて周知するとともに、週ごとの熱中症による救急搬送人員数の公表資料の中で、日別の救急搬送件数とWBGTの関係について分析するなど、環境省と連携した熱中症対策に取り組んでいる。

*1 暑さ指数(WBGT(湿球黒球温度)):Wet Bulb Globe Temperatureとは、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標。単位は気温と同じ摂氏度(℃)で示され、その値は気温とは異なる。暑さ指数(WBGT)は人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱吸収に与える影響の大きい<1>湿度、<2>日射・輻射など周囲の熱環境、<3>気温の3つを取り入れた指標。

(3) 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた取組

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、7月下旬から9月上旬までの時期(7月24日~8月9日、8月25日~9月6日)に開催され、特に世界各国から日本の気候に慣れていない外国人来訪者が多数訪問することが見込まれることから、「東京2020に向けたアスリート・観客の暑さ対策に係る関係府省庁等連絡会議」が開催され、平成27年9月1日に当面の対策が「中間とりまとめ」として策定された。この中で、観客等の熱中症に係る救急体制の整備、外国人来訪者に対する熱中症等関連情報提供に係る検討体制の立ち上げ等が必要とされており、消防庁では、引き続き関係省庁と連携し検討を継続していくこととしている。
また、平成26年度に開催された救急業務のあり方に関する検討会において、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた課題の整理が行われ、外国人来訪者や開催地周辺の一般市民を対象とした熱中症予防啓発の強化や関係省庁と連携した啓発手段(ツイッター・リーフレット)の外国語版の作成・配布、応急手当講習を通じた熱中症予防策の普及啓発等が検討課題として挙げられた。これを受け、平成27年度に開催されている救急業務のあり方に関する検討会では、熱中症予防対策を普及啓発するための応急手当講習の内容、熱中症を含めた多数傷病者発生時の円滑な救急業務のあり方等について、実態調査等を踏まえ、具体的な検討を進めている。

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