平成29年版 消防白書

2.平成29年1月から10月までの主な風水害

平成29年1月から10月までの主な風水害による被害状況については「第1-5-2表」のとおり。
なお、平成29年7月九州北部豪雨を含む6月30日からの梅雨前線に伴う大雨及び台風第3号による各地の被害等の状況については、特集1「平成29年7月九州北部豪雨の被害と対応」に詳細を記載している。

第1-5-2表 平成29年1月から10月までの主な風水害による被害状況

(平成29年10月現在)

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第1-5-2表 平成29年1月から10月までの主な風水害による被害状況

(1)7月22日からの梅雨前線に伴う大雨に係る被害等の状況

東北地方及び北陸地方付近に停滞する前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で、前線の活動が活発となり、7月22日から東北地方や北陸地方を中心に大雨となった。
秋田県では、7月22日及び23日の2日間の降水量が、秋田市雄和で348.5ミリ、横手市横手で314.5ミリ、秋田市大正寺で305ミリに達するなど、多いところで300ミリを超える大雨となり、平年の7月の月降水量の1.5倍を超える記録的な大雨となったところがあった。
北陸地方では、7月23日から25日までの3日間の降水量が、富山県富山で259ミリ、新潟県新潟で227.5ミリ、石川県金沢で224ミリとなるなど、各地で大雨となったところがあった。
この大雨による人的被害はなかったが、住家被害が多数発生した。また、秋田県において土砂災害や道路冠水による孤立事案が多数発生した。
消防庁では、平成29年7月九州北部豪雨への対応のため、7月6日から設置中であった消防庁災害対策本部にて、情報収集体制の強化を図った。また、7月24日17時27分に、各都道府県及び各指定都市に対して「秋田県を中心とした東北・北陸地方の大雨警戒情報」を発出し、警戒を呼び掛けた。

(2)台風第5号に係る被害等の状況

台風第5号の接近・上陸に伴い、西日本から東日本にかけての広い範囲で大雨となった。降り始めからの総降水量が、奄美地方では600ミリを超えたほか、近畿地方や北陸地方で最大24時間降水量がこれまでの観測記録の値を更新するなど、記録的な大雨となった。
特に、8月4日から6日にかけて、奄美地方や九州南部付近を台風がゆっくり進んだため、5日は奄美地方の奄美市や瀬戸内町で猛烈な雨が降り、奄美市名瀬で540.0ミリ、瀬戸内町古仁屋で427.0ミリの最大24時間降水量を観測した。また、近畿地方や北陸地方では、8月7日から8日にかけて断続的に激しい雨が降り、滋賀県の米原市米原で264.5ミリ、長浜市柳ヶ瀬で252.5ミリ、石川県の白山市白山河内で262.5ミリの最大24時間降水量を観測するなど、観測史上1位の値を更新した。
この台風による人的被害は死者2人(鹿児島県)、重傷者2人及び軽傷者49人のほか、住家被害も多数発生した。
消防庁では、8月4日14時02分に、各都道府県及び各指定都市に対して「平成29年台風第5号の大雨警戒情報」を発出し、警戒を呼び掛けた。また、8月6日8時00分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置し(第1次応急体制)、情報収集体制の強化を図った。

(3)台風第18号に係る被害等の状況

台風第18号は、9月13日に宮古島付近を北上した後、17日11時半頃に鹿児島県薩摩半島を通過後、鹿児島県垂水市付近に上陸した。その後、高知県西部及び兵庫県明石市付近に再上陸し、新潟県沖で温帯低気圧となった。
台風第18号や活発な前線の影響で、西日本から北日本にかけて1時間に80ミリを超える猛烈な雨となったところがあり、大分県佐伯市で89.5ミリ、北海道大樹町で85.0ミリを観測し、いずれも観測史上1位の値を更新した。また、南西諸島や西日本では、24時間の降水量が400ミリを超え、降り始めからの降水量が500ミリを超える大雨となったところがあった。
また、沖縄から北海道に至る広い範囲で風速20メートル以上の非常に強い風を観測し、南西諸島や西日本では風速30メートルを超える猛烈な風となったところがあった。
この台風による人的被害は、死者5人(香川県1人、高知県3人及び大分県1人)、重傷者8人及び軽傷者51人のほか、住家被害も多数発生した。
消防庁では、9月15日14時12分に、各都道府県及び各指定都市に対して「平成29年台風第18号の大雨警戒情報」を発出し、警戒を呼び掛けた。また、9月16日17時00分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置し(第1次応急体制)、情報収集体制の強化を図った。

(4)台風第21号に係る被害等の状況

台風第21号は、10月21日から22日にかけて日本の南を北上し、23日3時頃、超大型で強い勢力を維持したまま、静岡県御前崎市付近に上陸した。その後、広い暴風域を伴ったまま北東に進み、15時頃に北海道の東の海上で温帯低気圧となった。
台風第21号を取り巻く発達した雨雲や本州付近に停滞した前線の影響で、西日本から東日本及び東北地方の広い範囲で大雨となった。特に、48時間の降水量が和歌山県新宮市新宮で888.5ミリ、三重県伊勢市小俣で539.0ミリとなり、観測史上1位の値を更新するなど、21日から23日にかけての降水量が近畿地方や東海地方を中心に500ミリを超える記録的な大雨となった。
また、沖縄から北海道に至る広い範囲で風速20メートル以上の非常に強い風を観測し、西日本、東日本及び北海道では風速30メートルを超える猛烈な風となったところがあった。
この台風による人的被害は、死者8人(茨城県1人、富山県1人、長野県1人、三重県2人、大阪府2人及び和歌山県1人)、重傷者28人及び軽傷者187人のほか、住家被害も多数発生した。
消防庁では、10月20日15時53分に、各都道府県及び各指定都市に対して「平成29年台風第21号警戒情報」を発出し、警戒を呼び掛けた。また、10月22日18時00分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置し(第1次応急体制)、情報収集体制の強化を図った。

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