4.事業者及び各消防本部等において取り組むべきこと
以下、上記3の主な課題を踏まえ、検討会で提言された事業者及び各消防本部等が取り組むべき主な事項及び提言を受けた消防庁の対応について記載する。
(1)火災の拡大を初期段階で確実に防止するための対策の確保
ア 防火シャッターの確実な作動
防火シャッターの確実な作動に関する対策として、電線のショートによる被害防止対策の強化や事業者による倉庫ごとの実情に応じた維持管理計画の策定及び実施等が必要である。
イ 事業者における初動対応
消火栓を用いた消火訓練や実火災を想定した通報・避難訓練について、倉庫の状況に応じた効果的な内容を事業者が計画し、実施することにより、火災発生時の初動対応の実効性を向上させることが必要である。
(2)仮に火災が広範に拡大した場合においても、より効率的に消火できる対策の充実
火災拡大期における消防活動として、以下の対策の充実が必要である。
- 倉庫ごとの警防計画や倉庫における消火活動要領の策定、外壁等の破壊及び水利の補充に関する協定の締結などによる消防本部における対策の強化
- より早期に進入するための経路や建物中央部に放水する手段等に関するガイドラインの作成
(3)提言を受けた消防庁の対応
(1)及び(2)の提言を受けた当面の対応として、消防庁では、平成29年秋季全国火災予防運動期間中における地域の実情に応じた重点項目として、大規模倉庫の防火安全対策の徹底を図るため、次の訓練指導を行うよう通知*1した。
- 実際に消火栓を使用して放水する訓練
- 模擬的な通報訓練
- 防火シャッターが閉鎖している場合を想定した経路による避難訓練
- 避難完了後に防火シャッターの手動操作装置を起動させる手順の確認訓練
- 事業所における消防隊への情報提供等に係る体制の確認
また、消防庁では、8月から9月にかけて、全国14箇所でブロック別説明会を開催し、各消防本部の消防長等に対し、本火災の概要や提言の内容についてより詳細に説明したほか、倉庫火災発生時の課題や対策について意見交換を行った。
さらに、「大規模倉庫火災におけるより効率的な消火活動を実施するための今後の方策について」(平成29年9月29日付け消防消第224号消防庁消防・救急課長通知)を発出し、消防本部等に対し、次の取組を平成29年度中に実施するよう要請した。
- 倉庫火災における消火活動要領の策定
- 大規模倉庫ごとの警防計画の策定
- 外壁等の破壊及び水利の確保等に関する協定の締結
- 住民等への適切な情報提供
消防庁では、今後の消防防災体制の充実に向け、次の取組を検討している。
- 大規模な火災や特殊な火災等が発生した際における学識経験者等の知見を活用する大規模火災等に対するアドバイザー制度の構築
- 緊急消防援助隊の地域合同ブロック訓練における大規模倉庫火災想定訓練等の実施
- 火災シミュレーションの高度化に関する研究開発
*1 関連通知:
「平成29年秋季全国火災予防運動の実施について」(平成29年8月30日付け消防予第277号消防庁長官通知)
「平成29年 秋季全国火災予防運動の実施について」(平成29年8月30日付け消防予第278号消防庁予防課長通知)