平成29年版 消防白書

2.答申の主な提言事項

(1)消防をとりまく課題とその対応方策

人口減少社会においても大規模地震、豪雨災害、火山災害、テロ災害や市街地における大規模な火災等の複雑化・多様化する災害に適切に対応していくためには、人的・財政的な資源を有効活用し、将来にわたって持続可能な消防体制を整備・確立していくことが必要である。常備消防については、社会経済情勢の変化、各般の技術の進展等に応じて、より高度・専門的な活動を実施できるようにしていかなければならない。

(2)消防の連携・協力の推進

ア 消防の連携・協力の推進の必要性等

直ちに広域化を進めることが困難な地域においても必要となる消防力を確保・充実していくため、消防事務の性質に応じて事務の一部について連携・協力を推進することが必要である。

イ 消防の連携・協力の推進方策

消防の連携・協力を推進するため、消防の連携・協力の実施主体となる市町村、都道府県及び国はそれぞれ以下の役割を果たすことが求められる。

  • 市町村は消防の連携・協力を行おうとするときは、円滑な実施を確保するための計画を作成すること
  • 都道府県は、管内の市町村の消防の連携・協力の取組について必要な調整を行うこと
  • 国は市町村の連携・協力実施計画の作成に関し基本的な指針の明示や地方財政措置による支援を行うこと

ウ 推進期間

消防の連携・協力に係る積極的な取組を促す観点から、推進期間を設けて取り組むことが必要であり、推進期間については、消防の広域化の推進期間も踏まえ、平成29年4月1日から平成35年4月1日までの6年間とすることが適当である。

エ 消防の連携・協力の具体例

消防の連携・協力を実施するにあたっては、地域の災害特性や消防需要の見通し、地形的な状況等について把握分析しながら、関係する市町村において以下の具体例を参考に積極的な検討を実施していくことが必要である。

  • 指令の共同運用
  • 消防用車両の共同整備
  • 境界付近における消防署所の共同設置
  • 高度・専門的な違反処理や特殊な火災原因調査等の予防業務における消防の連携・協力
  • 専門的な人材育成の推進
  • 応援計画の見直し等による消防力の強化

オ 消防の広域化の更なる推進

消防の広域化は、消防力の確保・充実のための方策として極めて有効な手段であり、今後とも、消防体制の整備・確立の手段として、最も有効なものとして推進していくことが重要である。

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