2.検討会の提言内容を踏まえた要請事項
検討会の提言内容を踏まえ、消防庁として「消防本部における女性消防吏員の更なる活躍に向けた取組の推進について」(平成27年7月29日付け消防消第149号消防庁次長通知)により、以下の取組を市町村及び各消防本部に対し要請した。
(1)女性消防吏員の計画的な増員の確保
ア 数値目標の設定による計画的な増員
消防全体として、消防吏員に占める女性消防吏員の全国の比率を、平成38年度当初までに5%に引き上げることを共通目標とする。
この共通目標の達成に向け、各消防本部においては、本部ごとの実情に応じて、以下を目安として数値目標を設定した上で、計画的な増員に取り組むこと。
【目標設定の目安】(特集6-2図)
ⅰ 毎年の女性採用者数をこれまでの2倍から2.5倍程度以上に引き上げることにより、女性消防吏員比率を10年間で倍増
ただし、地域の中核的な消防本部など一定規模以上の消防本部では、少なくとも5%水準まで増加
ⅱ 女性消防吏員がゼロの消防本部については、これを早期に解消するとともに、可能な限り速やかに複数人を確保
特集6-2図 数値目標設定イメージ
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イ 女性の採用の拡大に向けた積極的な取組
(ア)積極的なPR活動の展開
女性消防吏員を増加させるためには、まずは消防を自らの職業として選択肢に含める女性を大幅に増やすことが喫緊の課題であることから、各消防本部は、これから社会人になる年齢層の女性に対し、具体的な業務内容や勤務条件等を含め、消防の仕事の魅力について、より積極的にPRするとともに、消防は女性が活躍できる職場であることの理解を深めるための説明会等を行うこと。
(イ)採用試験における身体的制限について
採用募集に際し、身長・体重等の身体的制限を設けている消防本部においては、こうした制限が消防の職務の遂行上、必要最小限かつ社会通念からみて妥当な範囲のものかどうか、検証の上、必要に応じて見直しを検討すること。
(ウ)女性消防吏員の増加を踏まえた円滑な人事管理等の検討
消防は、市町村長部局の他の業務とは異なり、一定の隊員数で現場での部隊活動を行うため、現場活動従事者に長期の休暇や休業を取得する職員が生じた際に、必ずその欠けた1人を代替として補充しなければ部隊活動に支障を来すという職務上の特殊性を有する。
今後、消防本部が行う女性消防吏員の採用の大幅拡大にあわせ、市町村においては、消防における職務上の特殊性を理解の上、適切な措置を検討すること。具体的には想定される休業等に際し、消防力が継続的に維持できるような代替職員の確保等が考えられること。
(2)適材適所を原則とした女性消防吏員の職域の拡大
消防業務において、法令による制限を除き、性別を理由として従事できる業務を制限することはできないことを十分に理解し、女性消防吏員の意欲と適性に応じた人事配置を行うこと。
なお、各隊の活動水準について一定レベルを確保することは必要不可欠であり、性別を問わず、各隊員がその活動に必要な能力を満たさなければならない点に留意すること。
(3)ライフステージに応じた様々な配慮
現状においては、女性消防吏員が極端に少ないこと、妊娠・出産といった母性保護に係る配慮や、子育て期における配慮が必要であることから、女性についてライフステージに応じた人事上の様々な配慮が必要である。
(4)消防長等消防本部幹部職員の意識改革
消防長は、消防本部のトップとして消防事務を統括し、全ての消防職員を指揮監督するなど、市町村の他の幹部職員と比較しても特に重い責任・権限を有している。そのため、消防長には、女性消防吏員の活躍推進を組織的に実施していくため強いリーダーシップを発揮することが求められる。
各消防本部の消防長は、女性の活躍推進の意義を十分に理解し、自らの責務として各種の施策を実行すること。また、消防本部幹部職員に対しても、研修等により女性の活躍推進について理解を深めるよう取組を行うこと。
(5)その他
ア 施設・装備の改善
各消防本部においては、女性消防吏員の活躍の場を広げるために、消防本部・消防署・支所(出張所)等において、女性専用のトイレ、浴室、仮眠室などの施設整備を計画的に推進すること。
なお、消防署所等における女性専用施設の整備に要する経費について、平成28年度から特別交付税措置を講じている。
また、女性消防吏員の要望に応じて、女性用の被服・装備品の導入を積極的に進めること。
イ 女性の活躍情報の「見える化」の推進
各消防本部においては、女性割合、女性の採用者数、女性の管理職の割合及び女性活躍推進に向けた取組状況について、ホームページに掲載するなど「見える化」を推進すること。
消防庁としては、これらの取組の考え方、対応方針等について、ホームページ等により全国の消防本部等に対し周知を図っている。また、女性消防吏員の採用拡大に向けたPR活動に対する支援などの広報等の施策についても積極的に展開している。