平成29年版 消防白書

3.高齢者、障害者及び外国人来訪者等に配慮した防火安全対策

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されるに当たり、多数の外国人来訪者や障害者等が駅・空港や競技場、旅館・ホテルなどを利用することが想定される。
これらの施設では、一般的に、火災発生時には、その旨を知らせる自動火災報知設備の鳴動や非常放送等を聴くことなどにより、また、地震発生時には緊急地震速報や揺れを体感することなどにより、施設利用者は異常事態の発生を認識し、避難等を行う。その際、外国人来訪者や障害など様々な特性がある方(以下「外国人来訪者等」という。)の中には、例えば日本語音声だけでは災害情報を十分に受け取ることができないことや階段等がある経路での避難が難しい場合があることなどの課題があることから、外国人来訪者等の個別の事情に配慮した災害情報の伝達や避難誘導が求められる。

(1)「外国人来訪者等が利用する施設における避難誘導のあり方等に関する検討部会」

このような状況を踏まえ、平成28年度から「外国人来訪者等が利用する施設における避難誘導のあり方等に関する検討部会」(以下「検討部会」という。)を開催し、スマートフォンアプリやデジタルサイネージ*1等の活用など、外国人来訪者等に配慮した災害発生時の情報伝達や避難誘導を効果的に行うための方策を検討している(特集9-3図、特集9-4図)。

特集9-3図 防災センター等から外国人来訪者等への情報伝達・避難誘導の方策の例

スマートフォンアプリによる多言語での情報伝達等の画像
【スマートフォンアプリによる多言語での情報伝達等】
外国人来訪者等が、日常使用しているスマートフォンに専用アプリをインストールすることにより、災害発生時等に当該携帯端末に適切な災害情報等を表示
デジタルサイネージによる情報伝達等の画像
【デジタルサイネージによる情報伝達等】
平常時は、施設において広告や観光情報等を表示する画面として活用するが、災害発生時等には、画面に詳細な災害情報や適切な避難方向などを表示し、これらの情報を外国人来訪者等に伝達

特集9-4図 自衛消防隊員から外国人来訪者等への情報伝達・避難誘導の方策の例

多言語翻訳機能付き拡声器による多言語での情報伝達等の画像
【多言語翻訳機能付き拡声器による多言語での情報伝達等】
入力音声等を指定した言語に翻訳し、拡声する機能を活用して、災害発生時等に情報伝達
多言語音声翻訳アプリ等を活用した多言語での情報伝達等の画像
【多言語音声翻訳アプリ等を活用した多言語での情報伝達等】
入力音声等を指定した言語に翻訳し、音声等で出力する機能を活用して、災害発生時等に情報伝達
フリップボードによる情報伝達等の画像
【フリップボードによる情報伝達等】
災害が発生した旨や避難の方向などを示したフリップボードを使用して、外国人来訪者等に情報伝達

検討部会において、平成29年度末までに「外国人来訪者等が利用する施設における災害情報の伝達・避難誘導に関するガイドライン」を策定し、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて外国人来訪者等に配慮した情報伝達及び避難誘導の普及を促進していくこととしている。

*1 デジタルサイネージ(電子看板・掲示板)とは、屋外や店頭、交通機関など、一般家庭以外の場所でディスプレイなどの表示機器で情報を発信するメディアである。

(2)光警報装置の設置に係るガイドライン

高齢者、障害者等に対して火災発生時に警報を適切に伝えることができる光警報装置の有効な設置方法等を示した「光警報装置の設置に係るガイドライン」を平成28年9月に策定するとともに、その設置に係る運用通知「光警報装置の設置に係るガイドラインの運用について(通知)」(平成29年8月24日付け消防予第268号消防庁予防課長通知)を発出し、普及を推進しているところである。

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