平成30年版 消防白書

2.政府の主な動き及び消防機関等の活動

(1)政府の主な動き

政府においては、9月6日3時07分の地震発生後、直ちに官邸対策室を設置するとともに、3時10分には内閣総理大臣から関係省庁に対して、<1>早急に被害状況を把握すること、<2>地方自治体とも緊密に連携し、政府一体となって、被災者の救命・救助等の災害応急対策に全力で取り組むこと、<3>被害の拡大防止の措置を徹底すること、との指示が出された。
また、3時35分に関係省庁の局長級で構成される緊急参集チーム協議が開催され、関係省庁間で被害状況等の情報が共有された。
その後、6時10分に内閣府情報先遣チームが北海道に向けて出発するとともに、7時37分に関係閣僚会議が開催され、内閣総理大臣から関係省庁に対して、被災地の状況把握を進め、人命第一の方針の下、被災者の救命・救助に全力を尽くすとともに、食料や生活物資の確保、ライフラインの復旧にあらゆる手を尽くすよう指示が出された。
また、地震発生3日後の9日には、内閣総理大臣が北海道を訪問し、厚真町の土砂災害現場や札幌市の液状化現場などを視察した。
さらに、被災地の状況を把握するため、9月19日に内閣府特命担当大臣(防災)を団長とする政府調査団を北海道に派遣した。
被災自治体への応援職員の派遣については、「被災市区町村応援職員確保システム」に基づき、9月6日の発災当日に総務省職員を北海道に派遣して、事前の情報収集を行い、9月11日には、応援の要請があった極めて被害の大きい3町に対し、7県の対口(たいこう)支援団体を決定するなど、迅速な初動対応を行った。その結果、被災3町に対して7県から、延べ2,951人の応援職員が派遣され、避難所運営や罹災証明書交付業務等に従事した。

(2)消防庁の対応

消防庁においては、9月6日3時07分の地震発生と同時に、消防庁長官を長とする消防庁災害対策本部(第3次応急体制)を設置し、震度7を観測した北海道に対して、適切な対応と迅速な被害報告について要請するとともに、同じく震度5弱以上を観測した消防本部及び市町村に直接問い合わせ、被害状況の把握に努めた。
また、最大震度7を記録し、緊急消防援助隊の応援等の要請等に関する要綱第26条に定める迅速出動の適用条件に該当したため、消防庁長官は、消防組織法第44条第2項及び第4項の規定に基づき、地震発生後、直ちに青森県、岩手県、宮城県、秋田県の各知事及び札幌市長に対して緊急消防援助隊の出動を求めるとともに、その後も山形県、福島県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県及び愛知県の各知事に対し、順次、緊急消防援助隊の出動を求め、救助活動及び情報収集の応援態勢を強化した(緊急消防援助隊の活動等の詳細については(5)に記載)。
あわせて、被災自治体の災害対応を支援するとともに、緊急消防援助隊の円滑な活動調整、さらには政府の災害対応に必要となる情報を収集するため、同日、消防庁職員6人を北海道庁、厚真町役場、胆振(いぶり)東部消防組合消防本部及び丘珠(おかだま)空港に派遣したほか、土砂災害の救助現場での助言を行うため、消防研究センターの職員4人を追加派遣するなど、延べ10人を現地に派遣した。
また、同日、北海道及び札幌市に対し「大規模地震発生後の危険物施設の安全確保について」(平成30年9月6日付け消防危第167号消防庁危険物保安室長通知)を発出して、地震の影響が大きかった地域に存する危険物施設の安全確保を呼び掛けたほか、北海道に対し「北海道胆振(いぶり)地方中東部を震源とする地震に伴う長時間停電を踏まえた防火対策の徹底について」(平成30年9月6日付け消防庁予防課、消防庁危険物保安室事務連絡)を発出して、停電が長時間継続した場合においても消防用設備等が有効に機能するよう万全の対策を呼び掛けるとともに、北海道に派遣した職員を通じ、災害対応の拠点となる庁舎等の非常用電源用の燃料を十分に確保するよう注意を促した。

(3)被災自治体の対応

北海道においては、9月6日3時07分の地震発生後、直ちに災害対策本部を設置するとともに、同日6時00分に自衛隊に対し災害派遣の要請を、6時10分に消防庁長官に対し緊急消防援助隊による応援を要請した。
また、被災市町村では、住民に対して余震への警戒を促すとともに、土砂災害の危険がある地域に順次、避難指示(緊急)・避難勧告等を発令して、早期の避難を呼び掛けた。
このほか、北海道においては、厚真町をはじめ道内全179市町村に対する災害救助法の適用を決定するとともに、北海道内全域に被災者生活再建支援法の適用を決定した。

(4)消防本部及び消防団の対応

ア 消防本部

被災地の消防本部には、地震発生直後から多数の119番通報が入電し、各消防本部は直ちに消火、救助、救急活動にあたると同時に、危険地域に居住する住民の避難誘導等、総力を挙げて対応した。 特に、土砂崩れにより多くの住民が安否不明となった厚真町では、地元の消防職員や消防団員はもとより、道内の消防本部の応援隊や緊急消防援助隊が、警察や自衛隊とも協力し、安否不明者の捜索など、懸命な救助活動にあたった。

胆振(いぶり)東部消防組合消防署厚真支署での指揮状況
胆振(いぶり)東部消防組合消防署厚真支署での指揮状況
(札幌市消防局提供)
胆振(いぶり)東部消防組合消防本部の活動状況
胆振(いぶり)東部消防組合消防本部の活動状況
(胆振(いぶり)東部消防組合消防本部提供)

また、被災地では、消防職員や消防団員による避難所周辺の巡回活動や土砂災害のおそれがある危険箇所の警戒活動等が長期間にわたり行われた。

イ 消防団

被災地において、消防団は、地震発生直後から、地域の安心・安全を守るため、救助活動や行方不明者の捜索活動にあたるとともに、巡回活動や土砂災害のおそれがある危険箇所の警戒活動、避難所運営の支援等を実施した。

(5)緊急消防援助隊の活動

地震発生を受け、消防庁長官の求めを受けた1都1道10県(北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県及び愛知県)の緊急消防援助隊は、本州からは、陸路を使用しての出動ができないため、民間フェリーを活用し被災地へ向けて出動した。また、防衛省に協力依頼し、航空自衛隊輸送機により、神奈川県大隊の消防車両と人員の輸送を行った。

フェリーによる輸送状況
フェリーによる輸送状況
(仙台市消防局提供)
航空自衛隊輸送機による輸送状況
航空自衛隊輸送機による輸送状況

札幌市消防局指揮支援隊は、北海道庁に設置された消防応援活動調整本部に部隊長の属する指揮支援隊として参集し、北海道、北海道内消防本部及び消防庁派遣職員のほか、警察、自衛隊、海上保安庁、DMAT、気象庁、国土交通省等の関係機関と連携し、被害情報の収集・整理、緊急消防援助隊の活動管理等を行った。
札幌市消防局指揮支援隊及び仙台市消防局指揮支援隊は、胆振(いぶり)東部消防組合消防本部において、警察、自衛隊等と連携し、被害情報の収集・整理、緊急消防援助隊の活動管理等を行った。
陸上隊は、第一次出動都道府県大隊である青森県、岩手県、宮城県及び秋田県の統合機動部隊が北海道へ向けて出動した。その後、重機等を活用した捜索・救助活動が必要となることから特殊装備小隊を中心に編成された青森県大隊、宮城県大隊及び東京都大隊が北海道へ向けて出動した。また、神奈川県大隊は、厚木基地及び入間基地から航空自衛隊輸送機により、北海道へ向けて出動した。厚真町では、山の斜面崩壊が多発し、大量の土砂が流れ出した災害現場において、警察、自衛隊等の関係機関と連携し、人力及び重機による土砂等の排除を行いながら、行方不明者の捜索・救助活動を昼夜を通し行った。
その後、9月10日には、行方不明者の救出が完了したため、緊急消防援助隊の活動を終了した。

陸上隊の活動状況
陸上隊の活動状況
(横浜市消防局提供)

航空小隊は、ヘリコプターの機動力を生かして、山の斜面崩壊により孤立した地域の住民の救助活動を実施し、派遣期間中に16人を救助したほか、陸上から進出困難な孤立地域への隊員投入や、ヘリコプターテレビ電送システムを活用した上空からの情報収集活動を実施した。

航空機の様子
航空機の様子
(川崎市消防局提供)

これらの懸命な活動の結果、陸上隊及び航空小隊を合わせて24人を救助した。
こうした緊急消防援助隊の活動は、9月6日から10日までの5日間にわたり行われ、出動隊の総数は、1都1道10県(北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県及び愛知県)197隊、827人(延べ活動数642隊、2,632人)となった。また、活動のピークは、9月6日で、136隊、569人であった。

第2章第7節2(2)ア(ウ)を参照

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