平成30年版 消防白書

[最近の震災を踏まえた今後の対応]

(1)政府の主な動き

大阪府北部を震源とする地震では、ブロック塀等の倒壊により人的被害が発生し、一部の塀については地震に対する十分な安全性が確保されているとは言えないことが判明した。
地震時に道路閉塞が発生し円滑な避難が困難となる可能性があることから、建物と同様、地方公共団体が指定した避難路沿いの一定規模以上のブロック塀等について、耐震診断及び耐震診断結果の報告を義務付けるため、建築物の耐震改修の促進に関する法律(平成7年法律第123号)に基づく政令等の改正が行われることとなった。
また、北海道胆振(いぶり)東部地震では、苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所の運転停止に伴い、道内全域で大規模な停電が発生し、地震で直接被害を受けなかった地域においても、大きな影響が生じた。
その他一連の災害でインフラの機能確保に関して問題点が明らかになった事象に対して、電力や空港など国民経済・生活を支え、国民の生命を守る重要インフラが、あらゆる災害に際して、その機能を発揮できるよう、9月21日に開催された「重要インフラの緊急点検に関する関係閣僚会議」を受け、9月28日時点で11府省庁において、需要インフラについて合計118項目の緊急点検を行うこととなった。

(2)消防庁の対応

災害発生後、行政機関が情報収集をはじめとする様々な災害対応業務を行うにあたって通信設備や電力の確保は不可欠であり、消防庁においても、上記の118項目の中で、都道府県及び市町村の衛星通信回線等の非常用通信手段の緊急点検を実施したほか、総務省総合通信基盤局と連携し、防災行政無線についても緊急点検を実施した。この緊急点検の結果を踏まえ、非常用通信手段確保等のため必要な対策を実施する予定である。
また、緊急点検とは別に、消防本部・消防署所や地方公共団体の災害対策本部が設置される庁舎について、災害対応機能の維持や業務継続性確保のための非常用電源の設置状況、地震対策・浸水対策の状況についての調査のほか、防災拠点となる公共施設等の耐震化状況について調査を実施している。
地方公共団体が行う対策に関しては、非常用電源の整備のほか、ブロック塀等を含む公共施設等の耐震診断や耐震化に要する経費について財政措置を行っているところであり、引き続き、活用可能な財政措置について周知するなどして、非常用電源の整備や公共施設の耐震化等を進めていく予定である。

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